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酔眼漂流記


2007-08-14(Tue)

敗北への凱旋/連城三紀彦

講談社ノベルス25周年記念企画で「綾辻・有栖川 復刊セレクション」の一冊。初版は昭和58年ということ。

終戦直後のクリスマス。津上芳男と名乗る男が殺された。容疑者と見られる女は、男のもうひとりの愛人を殺し、自らも海に身を投げた。事件は痴情のもつれから起きたものと片づけられた。二十数年後。作家の柚木桂作は将来を嘱望されながら戦場で散ったひとりのピアニスト・寺田武史を題材にした作品を書くことになる。その過程で、寺田と二十数年前の事件との繋がりを知り、彼の残した遺言と楽譜と出会うことになる。そこに秘められた悲劇とは?

ミステリのガジェットとしては暗号ミステリということになるか。しかし、その暗号を解くことが主題ではない。第一難し過ぎて、解けないよ。解読の手順を読んでも、正直言ってチンプンカンプン。まぁ、それは我が空気頭のなせる技ではあるが。解かれる過程なんてのはうっちゃっておきましょう。

何といっても暗号に秘められた、この物語の真相が心底すごいのだ。すご過ぎる。そしてわかるタイトルの意味。うわぁ、鳥肌が立ってきた。男と女の愛憎の果てに訪れる悲劇、このすさまじさはちょっと他にはないぞ、と断言しちまおう。そんなことあるわけない、と思いながらも想像できるだけの手応えがあるんだよね。

それはあまりにも罪深い。登場人物のひとりはその罪を背をって生きていかねばならないが、その重さを考えるとゾッとする。ひとりの人間が背負える重さじゃないぜ。

また真相が明らかになってわかるのは、この物語自体の意味。連城作品を語れるほど多くは読んでないけど、言わせてもらおう。その醍醐味の一つに読み終えた後、それまで見えていたものと違うものが浮かび上がってくる驚きがある。『敗北への凱旋』も何気なく読んでいたのもが、全ては「必然」だったんだよなぁ。決してご都合主義じゃなくて。

こんな物語を紡ぐ連城三紀彦はやっぱりすごい。そして、今この時期に読むにはぴったりの物語だ。

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