2007-10-14(Sun)
■ 心臓と左手/石持浅海
『月の扉』での探偵役だった”座間味くん”が再び活躍する短編集。あの沖縄でのハイジャック事件を担当していた大迫警視と新宿で再会。意気投合した二人はそれ以来定期的に酒を飲み交わす仲になる*1。警視の語る終わったけれどちょっと変わった事件の真相を、座間味くんは鋭い視点でひっくり返す。最初に真実だと思わせる絵を見せておいて、ほんの些細なことからその絵を全く違う絵に見せてしまう。これぞミステリの醍醐味。いつものたとえだけれど、優れたテーブルマジックを観ているようだ。実に鮮やかな手腕に拍手。
例えば表題作の「心臓と左手」。新興宗教を巡る殺人事件で、教祖は心臓をえぐられ左手を切断させるという凄惨な事件。意表をつく真相とのコントラストが素晴らしいったらありゃしない。
ただ敢えて不満を言えば、小粒だってことか。もちろん山椒は小粒でもぴりりと辛い、の通りなんだけど、似非グルメなものでこってりしたものを食べないとおなかいっぱいになった気がしないという悪い習性。
最後の『月の扉』の後日談である「再会」はどうなんだろう。見方によっては座間味くんはとんでもなく嫌なヤツに思えてしまう。厳しさも優しさだよ、ということなのか。真実を告げることで少女が救われるのなら。
*1 『Rのつく月には気をつけよう』同様、毎回酒と肴が違って、それだけでも結構そそる。やはり著者は酒好きなんだろうなぁ
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