酔眼漂流記

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2004-01-01(Thu) 年頭の挨拶 [長年日記] 編集

_ 2004年元旦

気分一新。心機一転。我がサイトもレンタルサーバへ。そして、Movable Type(以下MT)なんか導入してみたり。根がミーハーなもので新しいもの流行りものはとりあえず試したかったりするのだ。もっともしばらくは迷っていたんだけどね。なにせMTを使うためにはレンタルサーバを使わなきゃならない。しかし、わざわざお金を払ってサーバを借りるだけの意味が私にはあるのか?と自問自答。が、酔っぱらった勢いでいつの間にやらロリポップでサーバをレンタルしちゃいました。もうこうなりゃ後には引けぬ。と言うわけで、MTもインストール。ロリポップに関して言えば詳しいマニュアルがあるので苦労せずにインストールもできました。MT使うならロリポップはオススメです。

で、MTを使ってみた感想なんだけれども、これがすこぶるいい!とりあえずWeblog云々という事は置いといてサイト制作のツールとしてだけ見てもこいつはゴキゲンに使えるのだ。さすがに人気があるだけのことはあるよ。とても使い勝手がいいのだ。もっともフルに使いこなすためには少々お勉強しなきゃならない面もあるけど。まぁそれでも、素の状態でも結構使える。そんなわけで、MTにもそしてロリポップにも大満足。もっともロリポップっていい歳した男が借りるには何とはなしに抵抗があるんですけどねぇ。女の子じゃなくても借りていいんですよね?

と言うわけで、これからはお金を出してサイトを運営していくわけですから単なる自己満足だけで終わることのないようにしたい、とは思うのです。見に来て頂いた人に楽しんで頂けるようなサイトにしていきたいなぁ、なんて大胆な事を今年の抱負として思ってみるわけですね。ま、あくまでも抱負、ですから。


2004-01-02(Fri) [長年日記] 編集

_ 廃用身/久坂部羊

廃用身とは、麻痺のために動かなくなり回復の見込みのない手足の事。老人介護のうえで、本人にとっても介護する側にとっても不用となりうる廃用身を切り取ってしまうのはどうか?

と言う事を医師の漆原が思い付くのだ。しかも、その療法を実際に試みる、こっそりとね。その漆原の記した老人医療・介護を扱ったノンフィクションと言う体裁をとったフィクション。ウーム、我ながらなんだか判りづらい説明だな。

さて、これはミステリと呼んでいいものだろうか?謎があって、落ちがあるっていうのがミステリだとしたらあてはまらないな。ホラーとしてみるべきか。次々に老人の手足を切り取っていく様にはゾッとするような一種異様なリアリティがある。もしかして実際にこういった事が行われていて、これは本当にノンフィクションなのでは?と思わすほど。無気味さがたまらない。恐いもの見たさっていうか、ついつい引き込まれてしまうのだ。面白いは面白い。一気読み。

しかし、読後感がどうみもすっきりしない。終わり方に不満あり。最後にどんでん返しとか意外な真相とかいった結末がない。いや、無い事は無いのだが少なくとも私的には不満な締めくくり。これでは本当に"ノンフィクション"で終わっちゃってるのでは。もうちょっと盛り上げて欲しかったなぁ、と。

もっとメヤクチャいや〜なあと味を醸し出すとかさ。あっけなく終わっちゃっているのはどうでしょうね。ちょっと物足りなし。

廃用身 廃用身
久坂部 羊
幻冬舎
¥ 1,680

Tags: Mystery

2004-01-04(Sun) [長年日記] 編集

_ 人格転移の殺人/西澤保彦

初めて読んだときのインパクトは絶大。いきなりSFチックな設定に最初はちょっと腰も引け気味。宇宙人が創ったとおぼしき装置って・・・。その装置は中に入った者同士の人格を一定の期間ごとに入れ替えてしまうと言うもの。で、偶然居合わせた世にも不幸な6人の男女がその装置の犠牲になってしまいます。合衆国政府は、装置の存在は知ってたんだけど、手に負えないんで秘密裏に隠していたのでした。なので、哀れな6人は世間から隔離されてしまいます。そして人格が次々と他人の体に移り変わるという状況の中、連続殺人が起こるわけです。

こんなはちゃめちゃな設定でも、まさしく本格物ですんでご安心を。なによりこの設定が本作を面白くしている点なのだ。何故なら犯人の動機や目的が全くわからないって事。だってAさんを殺したとしても中身はAさんではないかもしれないんだから。ネ、いったい誰が誰を殺そうとしてるのかわからないでしょ。おまけに6人は初対面ときているんだから、いったいどんな解決が待つ事やら。しかし、解き明かされたその真相に「やられたー!」って叫ぶこと請け合い。もののみごとに騙されました。脱帽です。

最後にいったいこの装置の目的は何かって事にもオチがあって、それがなんかいい感じですね。

人格転移の殺人 (講談社ノベルス) 人格転移の殺人 (講談社ノベルス)
西澤 保彦
講談社
¥ 857


2004-01-05(Mon) 初詣 [長年日記] 編集

_ 浅草寺へ初詣

元旦から仕事で、本日やっと休日。そこで初詣に浅草まで行ってきました。まだまだ沢山の人出で仲見世も大賑わい。浅草寺の境内の鳩も大賑い。そう、こいつらときたら全く人怖じせず人の事をかすめて飛んでゆくので危ないったらありゃしない。

お賽銭もあげおみくじも買ったところで、さてまだ時間もある事だしせっかくだからと上野まで散歩がてらに歩いていくことにしたのです。上野はこっちの方角だよなぁ、と道も判らないのにとりあえず歩き出すのはいつもの事。そして、道に迷うのもいつもの事。まぁ、方向は間違っていないはずなので、気にせずにズンズン歩いていくと細い通りに出くわしたのでした。

そこはなんだか判らないながら明らかに妙なオーラを発しているのです。細いわりにはやたらとタクシーが乗り付け、おとっつぁんたちが降りてくる。で、よく見るとその通りには蝶ネクタイ姿のオニイさんたちがいっぱい立っているのですねぇ。その瞬間気付きましたよ。うわぁ、ここって吉原だぁ!!彷徨って吉原にたどり着くなんて世間は広いようで狭い。って、それは関係ないですか。ともかく妙に焦りましたね。別に悪い事をしているわけじゃぁないんですけれど。もう俯いて足早に通り過ぎましたとさ。


2004-01-06(Tue) [長年日記] 編集

_ 本陣殺人事件/横溝正史

記念すべき金田一耕助デビュー作

そして国産の、というより密室トリックの白眉といって過言ではない作品。

突き詰めれば単純なかつコケ脅し的なトリックなのだが、そこから醸し出される雰囲気が素晴らしい。物語の中にしっかりと溶け込んでいるのだ。まさに純和風

事件当夜に鳴り響く琴の音色のシーンの恐ろしさ。実際に真夜中に聞けばそれはもう腰を抜かしますって。でも単に恐ろしいだけではないのだ。恐ろしくも美しくのだ。これは横溝作品のひとつの特徴だと思うのだが。なんと言ってもこのトリックが発動される様を想像するとその美しさに身震いするぞ。

また、犯人はなぜ密室にしたという理由も納得できるもの。その辺の処理の仕方はうまいと思うなぁ。時々、理由もなくトリックのためだけに密室が出てくる作品ってのに出くわすときもあるからね。まぁ、それはそれなんだけど。様々に張り巡らされた伏線が金田一耕助によって収束していく様も圧巻。何はともあれご一読を。古典ではあるけど、今読んでも新鮮だと思うぞ。

本陣殺人事件 (角川文庫—金田一耕助ファイル) 本陣殺人事件 (角川文庫—金田一耕助ファイル)
横溝 正史
角川書店
¥ 660


2004-01-07(Wed) 重力ピエロ: 伊坂幸太郎: 新潮社 [長年日記] 編集

_ 重力ピエロ/伊坂幸太郎

全編に流れるのは優しさ。そこが甘ったるいと感じられることもあるかもしれないが、なんとも心地いい。そして素直にカッコイイと思えるのだ。

なんと言っても読み終えて気分がいい。なんだか幸せな気分。なにも物語は全てハッピーエンドで終わるべし、なんて事は言わない。でも、どうせなら読み終えた後に幸せな気持ちになりたい、と思うじゃないですか。まぁ実際これはハッピーエンドとは言い難いかもしれないけれど。話が出来過ぎ?いえいえ、現実にはありないような事でも、だからこそ小説の中ではスカッとしたいのだ。そこら辺の気持ちにググッと応えてくれる読後感。

もっとも正直いえば、読み始めはハズレかと思った。極めて映像的コミック的なのだ。それを軽快と見るか軽薄と見るか。これが同時代性、今ドキなのかね。最初はついていけなそうに思ったのはワタシが古い世代だからか。しかし、読み進むにつれこれが伊坂節と納得、すんなりと物語の中に入ってゆける。

ミステリの体裁をとってはいるものの、微妙にミステリではない、かな。この人もミステリは目的じゃなく手段として用いているようだ。しかし、ワタシにはまさにミステリ。それは伏線の妙味。トリックといった仕掛け的なものは無いし驚愕の結末といった事も一切無いが、これは伏線の妙を味わうミステリなのだ。隠し味がピリリと効いた一品。

重力ピエロ(伊坂幸太郎/新潮文庫)»セブンアンドワイ icon


2004-01-08(Thu) [長年日記] 編集

_ 影の肖像/北川歩美

何となく装丁に引かれて手にしたのだが、これが当たり。北川歩美はお初だけどグイグイとお話に引き込まれましたよ。ラストの展開も意外性があって○

何より物語が抱えている重いテーマが印象的。”愛する人のためには、何をどこまでが許されるのか?”って事なんだけれども。命を救うための禁断の行ない。

フィクションとはいえ、あり得ない話でもなさそうなのがちょっと恐い。知らないだけで実際にこんな事が行われているんじゃないかと。倫理観からは全く外れた行動だけれども、自分が親の立場だったろどうするだろうね。

が、当事者になっちゃうとなりふり構わずになっちゃうのかなぁ。

影の肖像 影の肖像
北川 歩実
祥伝社
¥ 1,890

Tags: Mystery

2004-01-09(Fri) [長年日記] 編集

_ 上高地の切り裂きジャック/島田荘司

本作は2編がカップリングされているが、表題作より「山手の幽霊」の方がお気に入り。不可解な事件の大盤振る舞い。封印された状態の核シェルターから発見された男の死体。だが彼は閉じ込められたと思われる日以降も外で目撃されているのだ。それって幽霊?しかし警察のご厄介にもなっており本人である事は確実。他にも幽霊の仕業としか思えない事件が

このわけの判らないっぷりが楽しくてたまらない。ああ、この先どうなるの、真相は何なの?とばかりに一気に読了。そして鮮やかなる御手洗潔の推理。判ってしまえば、なんだそんな事かと思わせてくれるのがまた快感。謎と真相にギャップがあるほど面白いと思うのだが、いかがでしょう。

『占星術殺人事件』や『斜め屋敷の犯罪註1は面白かったのにここ何年かはどうも・・・、と言われる人にはぜひおすすめしたいと思うのだ。

装丁は面白いが、カバーをめくると何か気色悪いぞ。それから「切り裂きジャック」と言うタイトルはどうかな、とも思うわけで。そういった話ではないと思うよ。

上高地の切り裂きジャック 上高地の切り裂きジャック
島田 荘司
原書房
¥ 1,680

註1 個人的島田作品No.1


2004-01-10(Sat) [長年日記] 編集

_ 七度狐/大倉祟裕

古式ゆかしいミステリなのだ。豪雨によって陸の孤島と化した村。典型的なクローズド・サークル。見立てによる連続殺人。過去の因業が現在に災いをもたらす。出だしから期待大。何を今さら的な設定でもやはりミステリはこうじゃなきゃ。

ワクワクしながら読み始める。こうした嗜好はやはり横溝正史によるところが大きい。よってどうしても対横溝作品ってことが尺度のひとつになる。そうしてみると・・・、どうもモッサリした感は否めない。いろいろと突っ込みどころ満載なのだ。

まず、この見立て殺人はかなり微妙だ。地味なのだ。指摘されなきゃ見立てだと気付かないだろう。判る人にしか判らない。もっとも、この場合は犯人の意図としてはそれでいいんだろうけど。でもやはり見立て殺人は極彩色に強烈にやっていただきたい。これだと何故犯人はそんな事をしたのかって興味が弱いのだ。

何故杵槌村で一門会を行う事にしたのか。物語の構成に関わる重大な事だと思うのだけれど、説明がなかったような。読み逃している?

最大の問題点は牧の推理にもどうも納得がいかない。犯人に気付いた点として、牧の言葉を借りると(以下伏せ字)

続きを読む(!ネタバレを含みます!)

どうも消化不良。見事には騙されなかったなぁ。

七度狐 (創元クライム・クラブ) 七度狐 (創元クライム・クラブ)
大倉 崇裕
東京創元社
¥ 1,785


2004-01-11(Sun) [長年日記] 編集

_ 父からの手紙/小杉健治

10年前家族を捨て家を出ていった父親。その裏に見え隠れする殺人の影。やがて息子が殺人容疑で逮捕されたことがきっかけで娘は父親を探す決意をする。そこで知り得た父親を巡る意外な真相は・・・。

この物語のポイントは何と言っても父親から毎年娘と息子の誕生日に送られてくる手紙だ。途中で事の真相にピンとくるものがあるものの、手紙に託された父親の想いが判った時には胸が熱くなる。どんな気持ちで彼は手紙を書いたのか。それを思うと最後は涙しちゃったよ。手紙の本当の意味。子を思う父親の心意気

人の幸せを願うと言うのはどういう事なのか。父親の取った行動は果たして正しかったのか。自分が犠牲になって人の幸せを願うってのは、相手からしてみればやはり間違いだ、と思うな。一緒に幸せにならなきゃ意味がないのだよ、たとえ苦しくても。誰かが誰かの事を思うが故に起きた悲劇。優しさの悲劇。

ただ、いくら何でも

続きを読む(!ネタバレを含みます!)

ってことがばれちゃうんじゃないのか。そんな重箱の隅を突くような事は考えなくてもいいんだろうけど、どうも気にはなる。

父からの手紙 父からの手紙
小杉 健治
NHK出版
¥ 1,785

Tags: Mystery

2004-01-12(Mon) [長年日記] 編集

_ 密室の鍵貸します/東川篤哉

カッパノベルスの新しいシリーズの第一弾。パッと見ため講談社ノベルズかと思った。もともとカッパノベルスって装丁が垢抜けてない気がしたのは私だけ?表紙を見るだけで面白そうな予感。装丁は大事。

作者は光文社文庫の『本格推理』出身。帯には有栖川有栖氏の推薦。しかし、この手の推薦文て話半分に聞いておかないとあとで後悔する、ことが多いよな。で、本作なんだけどトリック自体は目新しいものじゃないけけど、そのトリックを犯人が何故使ったのかって理由はなかなか面白いと思う。ある意味逆転の発想と言いましょうか。前代未聞、とまではいかないまでもかなり納得

飄々とした文体もいい。最初からなかなか笑わせてくれるのだ。なかなかこなれた文章。この時点で、かなりの高期待。でも、それをユーモアと見るかおふざけと見るかかなり微妙。話が進むにつれ、少し鼻についてきた感じもあり。だいたい於て現実にはあり得ないような刑事コンビの登場ってのはマイナス点。別にリアリティを重視しろとは言わないけど、コミックなキャラクターってのはどうもねぇ。ま、これは好みの問題。

ま、いたるところ力まかせな部分はあるにせよ註1ツボを押さえた良品ですな。

密室の鍵貸します (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン) 密室の鍵貸します (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン)
東川 篤哉
光文社
¥ 840

註1 ラストの犯人を指摘するとこなんて、そりゃねーだろと思わなくもなく

Tags: Mystery

2004-01-13(Tue) [長年日記] 編集

_ 模倣犯/宮部みゆき

ずっとほったらかしだったのをやっと読んだ。これだけの長編はやはり読むのにも勇気(?)がいるのだ。さて、その長さなのだがこれを饒舌と見るか緻密と見るか。正直に言えば私には、何もそこまで書き込まなくてもと思わなくもないではない。端役にもそれなりの物語が与えられているのは少々うっとうしく思えちゃうのですねぇ。もちろんそのディテールの積み重ねが物語の厚みを生んでいるともいえるんだろうけど。しかし、あちこちダイエットしたら一冊に収まっちまうんじゃないかなんて勘ぐったりして。思うにこれ、新聞連載ってことも影響しているのかもしれない

そんなこんなで読み終わったものの、もうひとつ面白さが伝わってこない。いやいやこれはあくまで読み手に問題があるんだと思いますが、えーっと誰が主人公? 誰を主人公とするか、言い換えればどの視点から見るかで感想は分かれてきそう。私的にはもうひとつ感情移入できる立場がなかったのだ。

ひとつ認識したのは、犯罪の重さはその家族にとっては加害者も被害者もないのだろうなぁ、ということ。どちらも世間から“攻撃”されてしまうのだね。常々思うことなのだが、被害者はもちろん加害者も実名で報道する意味ってあるのだろうか? 事件の詳細はもちろん報道することに意味はあると思うが、それにまつわる個人的なデータはどうなのか? 知りたい人だけが知ればいいと思うのだ。無条件に垂れ流してもいいようなことではない気がするのだなぁ。話は脱線するけれど。

それから、女性が女性であるが故に犯罪に巻き込まれてしまうと言うこと。そう、女性であるってだけで被害者になってしまうという事は今まで意識していなかった。やはり不条理だよなぁ。考えがまとまってないんでうまくコメントできないけど。

模倣犯〈上〉 模倣犯〈上〉
宮部 みゆき
小学館
¥ 1,995

模倣犯〈下〉 模倣犯〈下〉
宮部 みゆき
小学館
¥ 1,995


2004-01-14(Wed) [長年日記] 編集

_ The unseen 見えない精霊/林泰弘

いきなり冒頭で野生のトラにくわえられた老婆を助ける場面から始まって、一瞬嫌な予感が。その後も物語は少し現実離れの展開。ウーン、大丈夫か? なんてことは、あっさりと杞憂に終わった本作。読み終わった後の満足感は十分。

飛行船という密室の中で繰り返される惨劇。内部に犯人がいるようにも思えないし、当然外部から犯人が侵入するなんてことはあり得ない。おお、これぞませに不可能犯罪。もうこういった訳の解らない状況、謎に触れるだけでワクワクドキドキ、大満足

ただ、トリック自体は深く突っ込む余地はかなりあり。なんとなく途中で感づいちゃったし、騙され感がちょっと薄口ではある。でもそれがマイナスにならないのはトリックオンリーの作品じゃないと思えるから。何と言ってもトリックと語られるテーマがうまく作用していると思うのだ。

トリックは物語のためのあくまでも手段に使われているといった感じでしょうか。その辺は巻末の著者の言葉からも察しられるところ。この物語の結末としてはもうそれしかない、って落としどころ。このテーマには共感するところも多いなぁ。「見えるもの」と「見えないもの」。犯人は示されるけど、結局のところやはり精霊が犯人だったんだろうなぁ。読後感も爽やか。とても味のある美味しいミステリでした。

The unseen見えない精霊 (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン) The unseen見えない精霊 (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン)
林 泰広
光文社
¥ 820

Tags: Mystery

2004-01-15(Thu) 悪魔の手毬唄: 横溝正史 [長年日記] 編集

_ 悪魔の手毬唄/横溝正史

個人的に一番思い入れのある作品。過去に起こった悲劇に端を発する惨劇。横溝正史お得意の見立殺人炸裂。手毬唄に倣って繰り広げられる殺人は恐ろしく、そして美しい。悪魔の構図のごとく死体をデコレーションする様は一個の芸術作品を思わせる。これに限ったことではないが横溝作品はどれもビジュアル的だ。

しかし、その見立殺人なのだが著者は見立てがお好きなようでほかの作品でも盛んに用いているのだけれど、見立て自体に余り意味がなかったりするのだよなぁ。本作でも犯人の意図は一応説明されてはいるけれど、もう一つ弱いと言わざるを得ない。なんて事をいっていますがそれは決してマイナスにはなっていない。横溝正史は必ずしもロジックで読ませる作家ではないから。要するにご機嫌に効くスパイスなのだ。普通に殺されてたりしたら、もう面白さ半減な訳で。

本作は"顔のない死体"の問題も盛り込まれており著者はどう決着とつけるのかも見物。私はビックリ仰天しましたけどね。

余韻のあるラストシーンもいい。 余談だけれども、このラストシーンに関しては石坂浩二主演の映画版の方が断然お気に入りだったりする。

悪魔の手毬唄 (角川文庫—金田一耕助ファイル) 悪魔の手毬唄 (角川文庫—金田一耕助ファイル)
横溝 正史
角川書店
¥ 740

_ THE GETAWAY

スーパーチャンネルにて映画『ゲッタウェイ(THE GETAWAY)』を観る。アレックス・ボールドウィン、キム・ベイシンガー主演のリメイクの方。

ちなみにオリジナルはスティーブ・マックィーン、アリ・マッグロー主演でした。オリジナルはマックィーンともども大好きな映画の一つ。そんなわけで、公開当時は興味はあるものの観るのを迷っていた一編。さて、リメイク版の出来具合いはいかに。

観て驚いたのは、結構細部までオリジナルの忠実なリメイクだということ。そういった意味では、面白味には欠けるかな。演じている人間が違うだけなんだもの。もう少しオリジナリティがあってもいいのでは。思いきってラストをかえちゃうとか、ね。まぁ、それだけオリジナルは完成度が高かったということなんでしょう。

何と言っても断然マックィーンの方がかっこいいし、同じプロットでも雰囲気はオリジナルの方がいい味を出していると思うのだ。泥臭いけど、なんだか哀愁があって。この辺は監督のサム・ペキンパーの個性なんでしょうか。クライマックスの銃撃戦もペキンパー節炸裂。関係ないけど、この映画でショットガンというものを“見直に”感じたんじゃなかったかな?

ただ、アリとキムが演じた妻役のキャロルのキャラクターがが新旧では若干違う。アリの方がどちらかといえば耐え忍ぶって感じだったのが、キムだと結構強い女性という感じでしょうか。旦那に殴られれば殴り返すは、銃はバンバン撃つは。この辺は“イマドキ”ってことなんですかね。

何と言っても最終的にはマックィーンがカッコ良くて○なのです。

ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD] ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD]
ウォルター・ヒル
ワーナー・ホーム・ビデオ
¥ 3,152

Tags: Movie

2004-01-16(Fri) [長年日記] 編集

_ 怪盗ニック登場/エドワード・D・ホック

二万ドルの報酬で盗みの依頼を受ける怪盗ニック・ヴェルヴェットの活躍を描いた12編。

彼の盗みの哲学は変わっていて盗むものは宝石や名画といった価値のあるものはお断り。依頼を受けるのは看板の文字や何の変哲もないカレンダーといった一見価値のなさそうなものばかりなのだ。ニックは持ち前の頭脳とテクニックで鮮やかに依頼を遂行してゆく。そして、依頼人は何故そんなガラクタを欲しがるのかってのが全編に置ける「謎」のポイントであり本書の美味しいところ。単なるドロボーのお話では無く、最後にどんでん返しが待ち受けるのだ。

この中でワタシの一番は「真鍮の文字」。"SATOMEX"と言う企業名の看板から"S"と"E"と"X"の文字だけを盗んで欲しいと言う依頼。なんでそんなものが欲しいのかと思えば・・・、なるほどそんな理由があったとは! 思わず膝をたたいちゃう小気味良さ。これはきっと原書で読んだ方がインパクトは強いかもしれないけどね。

帯に「モンキー・パンチ氏推薦!!」ってあるのが結構この物語の雰囲気をあらわしてるかも。尤もストレートに『ルパン3世』を想像しちゃうとそれはそれで違うけれど。

怪盗ニック登場(エドワード・D・ホック/早川書房)»セブンアンドワイ icon

Tags: Mystery

2004-01-17(Sat) [長年日記] 編集

_ 獄門島/横溝正史

横溝作品最高傑作との呼び声高い一作。俳句に見立てられた三つの殺人にそれぞれ違ったトリックを用いるといった贅沢な内容。犯人だって贅沢三昧。なおかつ最後に明かされるは意外な真犯人。そりゃ意外ですって。だって真犯人は…。もう、それはそれはおなかいっぱいの読後感

相変わらずの見立て殺人の美しさにウットリ。まぁ、俳句に見立てる必然性があまり感じられない、なんてのは後愛嬌ですね。というより、横溝作品のお約束。

しかし何と言っても衝撃的なのは途中登場人物の一人が発するひと言、その意味するところは?これは物の見事に騙されました。判ってビックリ切れ味抜群のミスリード。この驚きのためだけに読む価値はあるぞ。脱帽です。

獄門島 (角川文庫—金田一耕助ファイル) 獄門島 (角川文庫—金田一耕助ファイル)
横溝 正史
角川書店
¥ 580

_ 横溝映像作品

私に取って横溝正史を語る上で欠かせないのは映像作品だ。市川昆監督、石坂浩二主演の映画シリーズとTBS系の古谷一行主演のTVシリーズ。これらの極めて出来のよい(多少玉石混合だとしても)映像作品によって横溝ファンになったといっても過言ではない。横溝ブームもこれらの映像作品によるところが大きいのだろう。安易な映像化じゃなかった事は著者にとっても(たぶん)読者にとっても(これは間違いなく)幸せな事だ。

その中でも映画『犬神家の一族』『悪魔の手毬唄』『獄門島』はワタシにとって最早バイブルである。原作の雰囲気を短い時間の中で見事に昇華させたこれらは、横溝作品の映画化としてだけではなく日本映画の中でも屈指の出来である、と宣言しちゃいたいぐらい。今でも再読すると登場人物の台詞は演じている役者の声で聞こえてくるし、場面も鮮やかに浮かび上がる。決してどちらかのイメージに縛られる事も無く、相乗効果抜群。思いきり物語の中に入ってゆけるのだ。まだ横溝作品を読んだ事がないならまずこの3本のどれかを見て欲しい。まだ比較的簡単にレンタルできると思う。面白いと感じたのなら、迷う事無く本屋へゴー、だ。でも出来る事なら原作を読んでから映画を見てまた読み返して欲しい。

思うに映像が見事なのは原作がもともとビュジュアル的だからこそ、とも言えるか。それだけ著者の力量が凄いと言う事でもある。何にしても、文句無く面白いことは請け合うぞ。


2004-01-19(Mon) [長年日記] 編集

_ 三つの棺/ジョン・ディクスン・カー

いやあ、やはりカーは淒や、と思わせるのに十分な一作。トリックに対するパワーが圧倒的。たとえ少々強引な力技でも、不可能状況を成立させてしまうのはお見事というしかない。ミステリ好きにはたまらない、読んでワクワクさせてくれる。

本作には密室からの人間消失と、そだけでも歯ごたえ十分なのにもうひとつ不可能状況を用意してくれている。グリモー教授が撃たれたのとほぼ同時と思われる時間に、別の場所での同じ銃での射殺事件。しかも、通りの真ん中での犯行にも関わらず目撃証言は犯人の声だけで、その姿を見ていない!

この謎に対するフェル博士の推理はお見事。判ってしまえば至極簡単なことなのだ。逆にだからこそ凄い凄い。もっと凄いのは、真相がわかって改めて読み返してみれば、実は最初からはっきりと答えが書かれていたんだよね、ってとこ。あー、感動の嵐。 もう一度言おう、やっぱカーは凄いわ。

史上名高い〈密室講義〉もこれに収録されてます。 未読の人には一読の価値あり。

三つの棺(ジョン・ディクスン・カー/早川書房)»セブンアンドワイ icon

Tags: Mystery

2004-01-20(Tue) [長年日記] 編集

_ 笑う警官/マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー

笑う警官 (角川文庫 赤 520-2) 笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)
マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー/高見 浩
角川グループパブリッシング
¥ 740

いやぁ、これは面白い。ミステリといっても刑事ドラマです。頭脳よりも足で解決するって感じでしょうか。マルティン・ベックをはじめとした個性豊かな刑事達の動きが見事に描かれています。

はじめて読むのにしっかりと各キャラクター達に感情移入できちゃうのは流石。舞台がなじみの薄いスウェーデンというのもなんだか異国情緒を醸し出していていい感じです。

それに何より謎解きの面白さにあふれています。軽機関銃で8人もの乗客を殺した犯人は誰なのか。その目的はなんなのか。そして部下の刑事はなぜ事件に巻き込まれたのか。

刑事達の地道な(それでいて飽きさせない)捜査によって謎が少しずつ解けていくのを読むのは、これぞミステリの醍醐味、でしょうね。

そして「笑う警官」というタイトルに込められた意味。読み終えたときにそれは明かされます。もうラストシーンにクラクラきちゃいました。もうこのラストシーンを読むだけでも価値があるかも。ある意味"衝撃的”なラストなんです。ああ、これが刑事稼業って事なんだろうなぁ、となんだかしみじみとさせられたラスト1行でした。

Tags: Mystery

2004-01-21(Wed) [長年日記] 編集

_ ラッシュライフ/伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部) ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)
伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,785

バラバラ死体がくっついて歩き出すように、バラバラの5つの物語もくっついて一つの物語へ。組み合わせが判らないパズルのピース。読み進む度にカッチと音をたて、収まるところへ収まってゆく。うわー、そんなところが繋がるのかぁ。繋がるだろうことは読む前から判っていることなのだけれど、あまりの見事さに鳥肌が立ったよ。そう、まさに表紙のエッシャーの騙し絵。物語はグルッと一周して終わりが始まりで始まりが終わりで。

読み終えて、なんだか元気が出るのは伊坂作品に共通すること。クライマックスの賭けのシーンで、もちろん結末は予想どおりなんだけど、それでもやっぱり拍手喝采。すてきな物語をありがとう。靴のひもを締め直して「もうひと頑張り!」と駆け出したくなる気分。人生悪いことばかりじゃないよね。

気になったのは、強盗の老夫妻や金髪の白人女性とか。思わせぶりでなんだかモヤモヤ感もあるんですが、きっとその向こう側に別の物語があるのだろうな、と深読みしたり。伊坂作品はどれも微妙につながっているようなので、いつの日かその謎が解けるのかも。そう、実は全部で一つの物語でした、とかね。

最後にどうでもいいことではありますが一言。一応ネタバレ。

続きを読む(!ネタバレを含みます!)

まぁ、物語の本質には全然関係のないことですけど。

ラッシュライフ(伊坂幸太郎/新潮文庫)»セブンアンドワイ icon


2004-01-22(Thu) [長年日記] 編集

_ ガンヘッド

日本映画専門チャンネルで映画『ガンヘッド』を放映。懐かしくて思わず観ちゃいました。

東宝とサンライズが組んで1989年に公開した、巨大変形ロボットを実写で描いたSFアクション大作。当時は15億円の制作費と鳴り物入りで結構話題になりましたっけ。かくいうワタシもいそいそと映画館に足を運んだ口。

出来の方は…。それはともかく。いや、よくアニメに逃げずに実写で頑張った!というところでしょうか。今回久方ぶりに改めて観たわけですが、なんだか微笑ましくっていい感じです。清く正しく美しいB級映画ってところでしょうか。

いろんな意味で楽しめた一編。日本映画に歴史あり、な訳です。こうした積み重ねがあって今があるわけですから。

ちなみに「ガンヘッド」については

http://kyron5.xrea.jp/gunhed/gunhedmenu.html|http://kyron5.xrea.jp/gunhed/gunhedmenu.html

辺りを見ていただければよろしいかと。

ガンヘッド [DVD] ガンヘッド [DVD]
原田眞人/河森正治/ジェームス・バノン
東宝
¥ 4,990

Tags: Movie

2004-01-23(Fri) [長年日記] 編集

_ ノヴァーリスの引用/奥泉光

恩師の葬儀で再会した四人は、十年前に不可解な死をと遂げた学友の謎を「推理」する。しかしミステリの形態は取っているものの、謎が解かれるカタルシスを味わうには不向き。やがて物語は語り部が変わるとファンタジーへ、さらにホラーへと変質していく。

「虚構」と「現実」の入れ混ざった浮遊感覚。惑わされっぱなし。なんとか「現実」の範囲内の出来事におさめて欲しいと思うのをラスト一行であっさりと裏切ってくれるし。

『グラント・ミステリー』もそうだけど、読み手を実に不安定にさせてくれる。この「気持ち悪さ」にどっぷり浸かれるかどうかで好き嫌いが別れるのではないでしょうか。ワタシと言えば、嫌い。が、嫌いだからこそ妙に引かれるってことがあるじゃぁないですか。これはまさにそれ。悪い夢を見たい方にはどうぞ、ってそんなすすめ方はないか。

奥泉作品は『グランド・ミステリー』に次いで2作目。難物だった『グランド・ミステリー』に比べれば難易度は低いけれど、結構きてます。それでも、妙に心に引っかかるのです。2冊読んだだけで言うのもなんですが、作品の根底にあるのは目に見える世界はひとつではない、見るものによって全く違う世界が存在する、といったところでしょうか。

ノヴァーリスの引用(奥泉光/集英社文庫)»セブンアンドワイ icon


2004-01-24(Sat) [長年日記] 編集

_ 人間動物園/連城三紀彦

人間動物園 (双葉文庫) 人間動物園 (双葉文庫)
連城 三紀彦
双葉社
¥ 660

単純に幼女誘拐事件だと思わせておいて、見事に裏切ってくれる快感。二転三転する真相。確かに前代未聞の誘拐事件なのです。盗聴器を巧みに使った犯人のこう妙な手口。まさに、完全犯罪。何たって犯罪があった事すらも気付かせないくらい。

でも、これ誘拐って言うのでしょうかね。誘拐と言うよりも・・・。ああ、タイトルの意味はそこにあるのか。そう思えば意味深なタイトル。しかし、犯人の目的及び動機がいまいち理解できなかったり。そこいらへんがちょっとマイナス。

そしてどうでもいいけど気になる点。登場人物の名字が微妙に一般的でないのは何か理由が?、と深読みしてしまった。

人間動物園(連城三紀彦/双葉文庫)»セブンアンドワイ icon


2004-01-26(Mon) [長年日記] 編集

_ アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

感想

タイトルからは内容が少しも伺い知れない。けれども、実はとても想いの詰まったタイトル。読み終えて解るその意味。帯にある「神様を閉じ込めにいかないか?」なんて台詞、涙が出てきたよ。

ラッシュライフ』や『重力ピエロ』に比べると随分とミステリしているように感じられるのは、版元が東京創元社だから、でしょうか? そうはいってもやはり謎解きがメインではないですね。ある程度ミステリに親しんでいる人なら途中で作者の仕掛けに気付くのではないでしょうか。実は河崎は○○○ではないのか?

しかし、そんなことはどうでも良かったりするのです。と言うか、そんなことが判ったぐらいでは、この面白さはびくともしない。何より圧倒されたのは緻密に計算された過去と現在を結ぶ糸。それはまさに巧妙な伏線。過去が現在に生き、現在が過去に蘇る。過去を語るために現在があり、またその逆でもあるのです。まき散らされたその伏線が、不意に目の前でパチンと弾ける小気味良さ。何気ない場面や言葉の裏に隠された“想い”に気付かされる度にもうため息をつくばかり。でも、一度読んだだけでは味わい尽くせそうにない。

そして時を隔てた二つの物語が、やがて一つの物語に収束していくのです。そこに待ち受ける結末は切なく哀しい。読み終えた布団の中で、熱い涙を堪えきれずに…。それでも。しんみりとさせながらも前向きな気持ちになれるのは伊坂節のなせる技、でしょうね。

本の趣味なんて人それぞれだから、全ての人にとって面白い物語なんてのはないだろうな、とは思う。思うんだけど、やはりこれは無条件に勧めたくなる一作。

アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎/創元推理文庫)»セブンアンドワイ icon


2004-01-27(Tue) [長年日記] 編集

_ ジェゼベルの死/クリスチアナ・ブランド

読みはじめたものの途中で挫折していました。どうも翻訳物って苦手だったりするのです。カタカナの名前はどうも覚えづらかったり。誰が誰やら判らなくなる。おまけに回りくどい言い回し。読んでいて何いってるのかさっぱり判らなくなる時がある。まぁ、これはワタシの頭の問題でもあるわけなんですけど。しかし、いきなり注釈なしで”ページェント”なんて知らない言葉が出てきて、ちょいと説明不足じゃないでしょうか。背景がどうも判りづらい。

観客が見守る舞台という一種の密室での殺人。状況を見る限り容疑者には全員殺人を犯すチャンスはない。不可能犯罪でもある。二転三転する展開。捜査の度に推理は変わり容疑者も変わり、謎は深まる。最後には皆「私が殺しました」と自白する異常事態。さて、真犯人はいったい誰?

でも、何か盛り上がりに欠く。それ挫折した理由でもあるのだが、謎の吸引力が弱いのだ。途中で飽きてしまったのだな。密室・不可能殺人といったのがメインだとすれば、誰にも出来なかったという不可能さはあまり感じられない。実際著者は誰もが犯人でもおかしくはないような印象を与えるし、あまり不可能さを追求するってことはしていないように思う。カーだったらと思うんだけれど、それは趣味の問題でもあるか。

ただね、最後にあっといわされましたね。以下ネタばれ。

続きを読む(!ネタバレを含みます!)

関係ないけど読み終えてから、ブライアン・ブライアンのあだ名がなんで”ブライアン・トゥー・タイムズ”なのかってことに気付いたよ。

ジェゼベルの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 57-2)(クリスチアナ・ブランド/恩地 三保子)

Tags: Mystery

2004-01-28(Wed) [長年日記] 編集

_ すべてがFになる/森博嗣

このトリックはなかなかすごいと思うのです。密室状態の中にどうやって犯人が侵入したかってことには拍手喝采。少なくとも、過去同じようなトリックは見たことはないです。そんな方法もあるわけですね。ま、反則すれすれでもあると思うんですけどね。そんなわけで実は密室トリックという印象が薄いのも確かです。

密室からの脱出トリックの方はちょっと煙りに巻かれました。判らない人には解らないのでは、なんて余計な心配を。思わず納得させられましたが。ま、ここら辺りが"理系ミステリィ"と言われる由縁なんでしょうか。でも死体の発見シーンがとてもショッキングで禍々しくておもわず悪い夢を見そう。しかもさり気なくそれが伏線になっている辺りはうまいですね。

タイトルにもなっている謎のメッセージ「すべてがFになる」の意味。実は、かなりあからさまなメッセージなのです。単純なことなのですが、でも判らないですよねぇ。もっとも解ったところで真相が見抜けるわけでもないけど、作者のこの仕掛けは好きです。私的にはかなりのインパクト。メインのトリックよりこの部分で評価大。

すべてがFになる(森博嗣/講談社文庫)»セブンアンドワイ icon

Tags: Mystery

2004-01-29(Thu) [長年日記] 編集

_ 首切り坂/相原大輔

首切り坂 (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン) 首切り坂 (カッパ・ノベルス—カッパ・ワン)
相原 大輔
光文社
¥ 820

明治という知らない時代の空気を感じさせる手腕はなかなかだと思います。押さえられたたトーンは読みやすく、けれどちょっと淡々とし過ぎるきらいもあるでしょうか。もう少しおどろおどろしい雰囲気があっても良かったのではないかと。呪だとか怪談だとかといった言葉ほど恐さみたいなものが感じられないのがもうもうひとつ。

また、ミステリとした場合謎に対する興味が弱いのもどうでしょうね。何が問題になるのが途中まで解りませんでした。実質“事件”が起こるのは三分の二を過ぎてからですもの。と、思う間もなく急転直下で解決へ。

トリック一発勝負、と言ってしまったら身も蓋もないですけど、善くも悪くもかなりインパクトはありますね。で、そのトリックをどうみるか。解説にも書かれているのですがこのトリックだけみればまさに“バカミス”系。面白い、十分楽しませていただきました。

でも、全体の雰囲気とそぐわないような気もするのです。その場面を想像するとあまりに“恐ろしさ”にそれまでのシリアスな場がいっぺんにお笑いへと…。舞台を現代にして、最初からバカミスののりだったらもっと面白かったのでは。

首切り坂(相原大輔/光文社)»セブンアンドワイ icon

Tags: Mystery

2004-01-30(Fri) [長年日記] 編集

_ 暗黒水域

表紙をみると白波をたて進む潜水艦と”暗黒水域”というタイトル。『対戦海域』をすぐ連想したのですが、ちょっと内容が違うようです。帯に「米国版プロジェクトX」とあるように潜水艦の開発と運用に携わった人々のドキュメントみたいですね。

しかし、ここに登場する原潜NR−1は一般市民はもとより海軍関係者にも知られていないという、どうやら“キワモノ”的な潜水艦みたいです。なんたって、4つの車輪が付いているという…。潜水艦でも陸上も走っちゃおうってか? 当時のソ連海軍に負けるなとばかりに画期的・独創的な潜水艦を生み出そうとしたんでしょうけど。しかし、必要なのか車輪? ちょっとそそられる一冊です。

暗黒水域 知られざる原潜NR-1 暗黒水域 知られざる原潜NR-1
L・ヴィボニー/D・デイヴィス/三宅 真理
文藝春秋
¥ 2,500

Tags: Book

2004-01-31(Sat) [長年日記] 編集

_ 白光/連城三紀彦

連城作品の魅力は意外な真相、といったところでしょうか。真実に見えていたものが、少し角度を変えてみただけで実はまったく違っていた。そんな驚きを与えてくれます。

本作も、最初からこの人が犯人なのかと匂わせておいて、事実中程で事件は解決しそうになります。が、そこから一捻りも二捻りもあってすっかり惑わされてしまいます。実際に少女を殺した犯人は示されます。が、"本当"に少女を殺したのは誰だったんでしょうか?

意外な犯人も、飛び切りのトリックもありません。でも、味わい深い読了感です。しかし何切ない話でしょう。誰でも持ちえる悪意・殺意をまざまざと見せつけられたようです。タイトルにある夏の強く白い光に当てられたように、少しぐったりしてしまいました。

白光 (連城三紀彦/光文社文庫)»Amazon| »セブンアンドワイ icon


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