2004-05-01(Sat) [長年日記] 編集
_ 長い腕/川崎草志
第21回横溝正史ミステリ大賞受賞作。決してつまんないわけではないけれど、もうひとつ物足りない。全体的にどうも未消化って印象なんだなぁ。どこをポイントにしたいのか、まあ私の方の問題かも知れませんが、よく判らん。
いわゆるネット犯罪ってものに題をとっているんですけど、そこにもうひとつの要素を加えたところがミソ。 のハズが、どうもうまく活かされてない気がする。 プロローグと、冒頭の二つの事件・事故もそう。 お話の魅せ方にもうひと工夫を、と言ったところでしょうか? どうも風呂敷きを広げすぎてるように思えます。
それから主人公の行動が強引すぎる。自殺した同僚と事件を起こした女子中学生が同じキャラクターのマスコットを持っていたからって、何か関連性があるのでは、と疑うのはちょっとどうでしょう。 後半の展開もスピーディーと言うよりも勝手に進んでいく感じで・・・。
でも、面白くないわけじゃあないですからね。なんたって一気に読めましたから。まぁ、好みの問題が大部分ですね。
長い腕 (文芸シリーズ)
角川書店
¥ 1,575
2004-05-05(Wed) [長年日記] 編集
_ 追いし者 追われし者/氷川透
ネタバレにならずに説明するのは難しいけど、メインのトリックを敢えて捨てトリックにして読者の目を欺いて最後にどんでん返しを狙おうとしたんだと邪推してみる。最初に予定されていた結末と実際の結末が違うとでも言いましょうか。ネタバレに近いような伏線も実はそれ自体が伏線なのかなと。読んでると、何となく作者の仕掛けが判ってくるのだな。そうしておいて、ちゃっかりと裏をかく。
が、肝心の最後の「実は・・・」ってとこがちーと、お粗末じゃないだろか、と思わないでもない。なんだか安っぽいテレビのサスペンス物みたいなんだもの。サプライズ度低し。それだったら最初に予定されていた結末の方がおもしろかったと思うんだけど。ただそうするとこのトリック、案外必然性がなかったりするかも。だいたい、最後に誰がこのトリックを暴くのかって問題があるよなぁ、たぶん。だから、こんな結末になったとか?
なんだか、未読の人には意味不明な感想ね。スイマセン。
追いし者 追われし者 (ミステリー・リーグ)
原書房
¥ 1,680
2004-05-06(Thu) [長年日記] 編集
_ 幽霊人命救助隊/高野和明
とりあえず、現時点での今年一番の収穫と言ってしまおう。読みながら大興奮、大満足。天国に行くために100人の命を助けなければならない幽霊4人の救助隊の活躍はスリリングでいて時にユーモラス、そして涙を誘う。タイムリミットの49日は彼等のとってもあっという間だろうけど、こっちにとってもあっという間の一気読み。
幽霊である彼等はこの世のものと関わることが出来ない。直接手を出して救えないのだ。そんな彼等はどうやって自殺志願者を救うのか? なんとメガホン(!)を使って声の限りに「死ぬな!」と説得するのだ。
一見ばかばかしいようでいて、でも助けるってのはそういうことなのかもしれないと妙に納得。で、妙にリアル。助けたいの必死の想いで相手の心に訴えかけていく。ただひたすら説得し励まし応援する姿は、想像するとなんだか微笑ましくて幸せな気分になるのだ。なんといってもメガホン、だからね。
でも案外、現実でも誰かの霊に助けてもらってるんじゃないかと思ったり。虫の知らせだとか、第六感だとか。それはさておき、幽霊だから何でも出来るってことにしていないところがいいなぁ。
あえて文句を言うとすれば、助けるということはそんなに簡単なことでもないだろうと思うのと、どうも一時的にしか助けたと言えないケースがあるということ。ちょっとその辺はお気楽かな、と思うけれどなんといっても一番救われるのは読んでいるこっちなのだから、それでいいのだ。そう、確実に読了後は充分幸せな気分に浸れましたよ。清く正しく美しいエンタテイメント。
幽霊人命救助隊
文藝春秋
¥ 1,680
2004-05-09(Sun) [長年日記] 編集
_ オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎
名作というものは再読に耐えうるものを言うのではないかと思うのだが、その点からいっても本作はまぎれもなく名作なのだ。ちょうど先だっての入院中に読んだのだが、読む本も尽き仕方なく2度、3度と読み返したのだか、何度読んでもめっぽう面白い。読むたびに発見があり、むしろ読むたびに面白くなっていく、と言えるかもしれない。
それは伏線の妙。何気ない台詞、エピソードが実はどれも意味を持つ。読み終えて分かる大きなひとつの意味。再読してみれば、著者がいかに丹念に物語の種を埋め込んでいるのかが判る。パズルのピースひとつだけでも観賞に耐えうるのが、つなぎ合わせてみるともっと素晴らしい絵が出来上がる驚き。
典型的な悪意の記号として城山。思えば伊坂作品にはこうしたキャラクターが必ず存在する。人の悪意だけを固めて創った醜いもの。それに対して、島の道徳であり、ルールである桜。この辺り、著者の想いの一端を伺えるところなのかも。勧善懲悪、と言ってしまえば簡単だけれど。この部分では頑に正統派だよなぁ。現実はともかく、やはり悪は必ず滅びるのだ。ベタではあるけどそのカタルシスがたまらない。そんなところも伊坂作品が好きな理由。
「この島に欠けているもの」の正体は、期待していた分そんなものなのか、と思わなくもなく。ただ、途中でさりげなくその答えを提示しているあたりさすがだなぁ。それも、2度も。これも読み返してニヤリ。
非現実であって現実な世界。現実的なおとぎ話。決して荻島は楽園ではないけれども、それでもどこか郷愁を誘うのはどうしてだろう。夕暮れの田圃で案山子と語る、なんて生活もいいよなぁ。
オーデュボンの祈り (新潮文庫)
新潮社
¥ 660
2004-05-10(Mon) [長年日記] 編集
_ 鏖殺の凶鳥(フッケバイン)/佐藤大輔
ミリタリー好きの私にはこの手の話、黄昏の第三帝国で戦うドイツ軍の物語なんていったのは弱いのだ。たとえば、『鷲は舞い降りた』とか・・・。滅びゆくものの美学と言いましょうかね。
実際問題は別として、大体において物語上のドイツ軍はイコール騎士道精神みたいなところがあって、カッコイイじゃないですか。もっとも、あくまでもドイツ軍の立場からみた場合ですけどね。そしてこの物語の主人公であるグロスマイスター大尉もカッコイイ。
そのグロスマイスターの台詞。
「ナチスから国を守るには幼すぎ、連合軍から守るには無力に過ぎた。であるならば、最後にあらわれたこの敵についてだけでも、義務を果たしたい。そう願っている」
うー、泣かせる。守るべきものを守る。この台詞にグッとくるものがあったらもう読むしかない。絶望的な状況下、もはや勝ち負けではない、己の信念の戦い。軟弱ものの私には、その姿勢は素直に憧れるのだ。
ほかにも、実戦では使われることのなかった試作兵器のオンパレード。その活躍ぶりに心くすぐってくれます。何はともあれ、その手の好きな人にはお勧めです。
でも、肝心のお話はどうもね。何だかB級ホラー映画みたいな展開になっちゃって。ラストも、もうひとひねりあっても良かったんではないでしょうか。
だいたい、フッケバインは撃墜できたのに、破壊はできないってのはどうかな。それと、お話は全然違うけど、どうも『鷲は舞い降りた』を連想してしまうのもどうかなぁ。
鏖殺の凶鳥(フッケバイン)—1945年ドイツ・国籍不明機撃墜事件
富士見書房
¥ 1,890
2004-05-11(Tue) [長年日記] 編集
_ 建築屍材/門前典之
まず思ったのは、文章がこなれていないかな、と。それと建築に関していろいろと語ってくれているんですが、専門的な事が果たして面白いと感じるかどうか。私にはちょっと冗舌に感じられましたけど。そういったことが伏線になってるのかも知れないけど、トリックを明かされたときに、それが専門的な知識によって成された事だと素直に驚けないというか。要するに知らない事だとそれは盲点にはならないですよね。「あー、それは気づかなかった。騙されたー」という感激が薄いのです。
それからメイントリックであるバラバラ死体は何処へ消えたのか、という謎の前振りが弱いです。盛り上がりに欠けると言いますか。とてもあっさりとしている。ただ、その部分は書くに書けなかったんではなかろうかと勝手に想像してます。下手にくどくどと描写するとネタバレになりかねないのかな。映像化に向かないトリックってありますけど、これは映像化に向いていて活字化には向いていないんではないかってのが個人的な感想。
それと、これは良い悪いの問題ではなく好みの問題ですけど動機の部分をあまり重要視していない。もちろんトリックがメインでその他の要素は二の次ってのも有だと思いますが、人を殺すならそれなりの理由はこしらえて欲しいなぁ。
最後にダイイングメッセージ。私はダイイングメッセージというものは否定的です。そして、本編のそれはかなりいただけないなぁ。クイズとしてみれば面白いことは面白いんですどね。
建築屍材
東京創元社
¥ 1,995
2004-05-14(Fri) [長年日記] 編集
_ 動かぬ証拠/蘇部健一
完全犯罪が思いもよらない一点から破綻する。そんな決定的瞬間をラスト1ページで、究極の証拠とともに一目瞭然で明かすかつてないミステリ。ホントに解決がラスト1ページを見ただけで解る。笑撃的な解決。
なんたって、最後のページはマンガチックなイラストになってるんだから。ある意味衝撃的、いや笑撃的なオチなのだ。あ、間違っても本屋で立ち読みでパラパラページをめくらないように。
で、一目瞭然かといえば、どうかなぁ。私の理解力が悪いのかも知れないけど、よく解らなかったのもいくつか。なかでも「逆転無罪」は解らんなぁ。
いや、解ったつもりだけど、やはり説明不足だと思うなぁ。そもそも“アレ”だけで説明するには難し過ぎやしないか?
それでも、例えば『コロンボ』や『古畑』がお好きな方には楽しめるのではないかと思ってみたり。意外な証拠のカタルシス、ってやつかな。軽く読めるんで三時のおやつになピッタリ、そんなミステリ。
動かぬ証拠 (講談社ノベルス)
講談社
¥ 882
2004-05-16(Sun) 犬神家の一族: 根津愛(代理)探偵事務所 [長年日記] 編集
_ 犬神家の一族/横溝正史
タイトルを見ただけでもクラクラきちゃう、横溝作品代表作。犬神家なんて名前からして早くも目の前に血の系譜を巡る悲劇といったものが浮かんでくるのだ。
仮面の男、謎の復員兵、過去の因縁、因業。舞台装置は完璧、おどろおどろしさ満点。そして、そこで繰り広げられる凄惨な殺人。 複雑にからみあった真相が解きほぐされていく快感。過去の業が現在に災いをもたらすというのはお決まりのパターンだけれど、ちっとも飽きさせないのは著者の凄さ。陰惨な話なのにどこかほっと出来るのはやはり金田一耕助というキャラクターのおかげでしょうね。
犬神家の一族 (角川文庫—金田一耕助ファイル)
角川書店
¥ 700
_ 根津愛(代理)探偵事務所/愛川晶
奇妙キテレツな謎に読書への挑戦状。いかにも正統パズラーといった趣の5篇。「カレーライスは知っていた」や「コロッケの密室」などタイトルからしてお腹の空くお話。レシピどおりに実際に料理を作れば犯人が判るという変った趣向。それはともかく、いかにもおいしそうなカレーライスなんで、カレー好きの私としては実際に作ろうかと思っちゃいましたけどね。
愛川さんはこれが2作目なんですけど、最初に読んだのが『化身』でした。そのイメージとは、まあ、ずいぶん違います。『化身』はシリアスでしたけど、こちらはコメディータッチ。実は、好み的にはコメディーはちょっと・・・、って感じなんですよね。おまけに、主人公が美少女女子高生探偵ってのも。スイマセン、これって私の好みの問題で内容にはまったく関係ありませんので念のため。それから、なんと根津愛さんは実在(?)してます。ホームページももっていてその名もズバリ『根津愛探偵事務所』です。
根津愛(代理)探偵事務所
原書房
¥ 1,470
2004-05-17(Mon) [長年日記] 編集
_ ウサギの乱/霞流一
帯のうたい文句である「誰も思いつかなかった不可能密室!」には、素直に頷かざるを得ない。いや、参りましたよ。殺人現場は窓のない部屋で、ドアには内側からチェーンんが掛けられていて、と舞台はおなじみのものなのだ。しかし、なのである。その密室を構成するトリックは凄まじいの一言だ。前代未聞というか、言語道断と言うか。確かに、誰もそんなこと思いつかないぞ。一度読んだら忘れられないほどの衝撃度。ああ、もし人を殺さなきゃなならないとしても、こんなトリックは使いたくない。
しかも、何故密室にする必要があったのかという理由も十分に理解できるものだし。そして、なによりそのトリックこそが物語全体の伏線になっている巧妙さ。一見色物的なトリックだけれども、よく考えられているなぁ。
犯人を特定するロジックもなかなか見所あり。ただ、犯人の条件に当てはまるのは(登場人物以外も考慮すると)ただ一人ではないよね、って思うのがちょっと弱点かな。でも、特にダイイング・メッセージの取り扱い方ががうまいと思うぞ。実に理にかなっているのだ。
だけれども。人が4人も殺される割には緊張感に欠けるのはどうしたものか。淡々と4つの事件が起こるだけにしか見えない。今ひとつ盛り上がりに欠けるのだ。肝心の密室トリックも事件に対しても登場人物たちは真剣に悩んでるように見えないし。「魔送球の密室」って言われてもね…。どうも、物語に一本芯が通っていないと言いましょうか、まとまりのない印象。お話の出来としては少々不満足。
あちらこちらに物語の要請上とはいえ少々強引とも思える展開も突っ込みどころ満載。そもそも、このいわゆる“バカミス”というノリが、あまりお好みではないのですねぇ。
ウサギの乱 (講談社ノベルス)
講談社
¥ 1,050
2004-05-18(Tue) [長年日記] 編集
_ 英国庭園の謎/有栖川有栖
雨天決行
細かいことを気にするようだけど、「雨天決行」を聞き間違えるのは無理があるような気がするんですけど。アレですかね、関東人と関西人の違いだとか。
竜胆紅一の疑惑
読み終えてスティーブン・キングの『ミザリー』が思い浮かんだ。いや、ただ何となく。妙な怖さを感じるのは、実際にあり得そうなことだからか。かわいさ余って憎さ百倍。
三つの日付
いかにして日付を錯覚させるか。なんだけど、伏線があるとはいえそんなのありか、と文句も言いなくもあり。結局火村のミスってことだよね。
完璧な遺書
倒叙スタイルの一編。遺書を書くときに果たしてワープロを使うかどうか。それはともかく、火村先生の指摘する証拠は今ひとつキレがない。可能性の問題だものなぁ。状況証拠すぎますよ。やはり、ただひとりを特定するようなものでないと、拍手喝采とはいかないね。
ジャバウォッキー
一番面白かったのは、この短編集に収録する際に付け足したという冒頭の部分だったりして。いずれにせよ、言葉遊びとかクイズの類いのようで、あまり楽しめる一編ではないな。
英国庭園の謎
暗号もの。今回の火村先生は誰が犯人か最後の瞬間まで判らなかったということなのか。どうも、暗号を解いただけで、犯人を捕まえることが出来たのは運が良かっただけ? 著者は件の暗号は簡単に出来たと仰るが、ある程度意味のある文にするのはやはり大変なのでは?
英国庭園の謎 (講談社ノベルス)
講談社
¥ 798
2004-05-19(Wed) [長年日記] 編集
_ ルール/古処誠二
『UNKOWN』『未完成』『少年たちの密室』と、派手さはないものの実にミステリ心をくすぐる作品を発表してきた著者。当然次回作も期待していたら、前作までとはがらりと趣向が違う太平洋戦争末期の日本軍を材にとった小説だったとは。
もっともこの著者の場合ミステリという部分にはあまりこだわっていないのではないか。たまたま前作はスタイルがミステリの形をとっただけで、書きたいテーマがはじめにありき、といった姿勢を感じる。根底に流れるものは前3作にも共通するものがあるように思う。
今回は、以前にも増して重い話になっている。極限状態での人間性の問題。人が人であるとはどういうことなのか? まさに“ルール”の問題なのだ。
しかし、今何故このような小説を?と思わないでもない。しかし、戦争というものが、時間という尺度では遥かな彼方に去った今では、誰かが書け継いでいかなければならないのかも知れない。“現在”は“過去”でもあるだから。そう言った意味でも、この著者はこの先どんなものを書いていくのか、かなり興味がある。 面白いと思うか、つまらないと思うか。それはともかくぜひ読んでみて欲しい一冊ではあるのです。
ルール
集英社
¥ 1,680
_ ペルシャ猫の謎/有栖川有栖
これはかなり問題作だ。
特に表題作の「ペルシャ猫の謎」は、いったい何とコメントすればいいのか?ある意味もの凄いというか画期的な事件の"解決"だと言えるわけなのだが・・・。
面白くない、わけではない。それでも、頭を抱えてしまうよなぁ。著者本人も後書きでふれているのだが、これはもはやミステリではない。ま、たまにはこういったのもいいかもしれない、といったところか。
間違っても初めて読む有栖川作品、としてはオススメできないけどね。あくまでも有栖川ファンのためだけに、だろうなぁ。
ペルシャ猫の謎 (講談社ノベルス)
講談社
¥ 819
2004-05-20(Thu) [長年日記] 編集
_ 分岐点/古処誠二
『ルール』に続いて舞台は太平洋戦争末期、日本。「何故、殺害したのか」という点で取り上げればミステリであるともいえるがそれでもやはりミステリではない。でも、もともと著者は“ミステリ”を書こうという気はないのでは。それは『ルール』はむろんの事、他の作品でもいえる事だと思うのだ。ミステリはあくまでもフレーバーじゃないかと。
で、感想なのだか、思う事は「正義とは何か」ってことだな。もっとも著者が書きたかった事、それを私が正しく受け取ったかどうか判らないが。世の中“正しい事”なんてない、と思うのだ。立場、状況が変われば正義の解釈も変わる。敢えて言うなら、声の大きい方なんだろう。例えばだが、つい最近戦争を起こしたあの国は正しかったのか、というよりも間違ってはいなかったのか。おまけに付和雷同しているように見える某政府。この物語は過去の日本の話だが、決してそれだけではないと思うのだ。今も形を変え、状況を変えておこっているはずの話。
最後の成瀬の独白は痛烈な皮肉に聞こえた。正しくはなくとも間違った事はしたくない、と思う私なのだった。
分岐点
双葉社
¥ 1,785
2004-05-25(Tue) [長年日記] 編集
_ 今日を忘れた明日の僕へ/黒田研二
実際にあるんですね、記憶することが出来ないという障害。昔何かのドキュメンタリー番組で見たことがある。それは記憶を失うということよりも、恐ろしいことなのかも知れない。
で、その障害を持った主人公の1人称で物語は展開。前半は伏線めいた話が続いて、この先何が待ち受けるのかとページも進む。毎日同じことの繰り返しだったものが(もっともそんなことも主人公は覚えてないんだが)、失踪した友人の死体が発見されたことで急展開。調べてみれば、どうしても自分が彼を殺したとしか思えない。ま、この手のお約束としてそんなはずないんで、では一体真相は、ってことに。 そんなに長い話でもないので(事実わずか1日の時間経過)一気に読了。なかなかの好編。
ただ、あっと驚く結末!とか言う展開じゃないので物足りなさもちらほら。もうひとつ盛り上がりに欠けるかな、と。登場人物も限られているので、おのずと誰が犯人でも驚かない。なによりメインのトリックまたは仕掛けがちょっと納得いかない。やや強引な気がする。いくらエイプリルフール だからといって、死体らしき物を見てなにもしないのはいかがなものか?本格ミステリというよりはサスペンス物、といった感想。
今日を忘れた明日の僕へ (ミステリー・リーグ)
原書房
¥ 1,680
2004-05-26(Wed) [長年日記] 編集
_ ルピナス探偵団の当惑/津原秦水
最後まで読んでちょっと驚いたのは、これは全くの新作ではないのだ。第一話と二話は十年前に一度出版されている。しかし、驚いたのはそのことではない。そのとき出版されたのは講談社のX文庫だったとは。X文庫ですぜ。我が人生に全く関係のもんね、と思っていたのが、よもやこんな形で遭遇するとは驚きじゃないですか。
もちろん著者がその当時「津原やすみ」名義でX文庫に執筆していたのは知っていたけど、いやはやこんなにも力の入った本格ものを書いていたとはね。そもそもX文庫なんて仕事柄手に取るけど、読もうなんて思いませんよ。意外と侮れないのだなと再認識。
もっとも著者も最後に書かれているけど、やはり当時はその体裁ゆえに本格推理とは認識されなかったようで。今思えば全くもったいないことだけれど、有り難いことに今こうして装い新たに蘇ったのだ。隠れた名作の復活、と言ってしまおう。
もとの素性のせいか、描かれる世界はどうにもくすぐったくなるこそばゆさはある。女子高生三人組ってだけでも少々身構えてしまったりね。しかし、小気味よいテンポで展開される物語は、読み出すとその世界観にすんなりと入ってゆける。
何よりも登場人物たちが微笑ましいし、その彼等のやり取り、掛け合いがとてもセンスよく笑わせてくれるのだ。絶妙なところで悪ふざけとはならず、ユーモアとして受け入れられるのは著者の力量だろうなぁ。
ミステリとしても三編からなる本作は、心憎いほどツボを押さえた逸品。なぜか犯行後に被害者の食べ残したピザをたいらげた犯人の謎。雪の館の二重の密室殺人の謎。死体消失と消えた右手の謎。丁寧に織り込まれた伏線と、キリリと締まったその解決に至るロジックはどれもとても上質で、骨太なミステリなのだ。
ルピナス探偵団の当惑 (ミステリー・リーグ)
原書房
¥ 1,680
2004-05-28(Fri) [長年日記] 編集
_ ラグナロク洞/霧舎巧
イントロもなくいきなり始まる物語には面食らったのだが…。キャラクターの紹介とかもほとんどないので、一作目から読まないと十二分に楽しめないのかも。いきなり話の展開がクライマックス、みたいのは何だかなぁ。正直最初は外れかな、とも思ったんですけど、 途中から急に引き込まれました。多少強引だけど、グイグイ引き込む力はなかなかだと思うな。
ただ、ホントに力技でねじ伏せられたって感じで、えっ!?、結局動機って何だったの?と思っちゃいましたけどね。一応ダイイング・メッセージを扱っているんですけど、私は、ダイイング・メッセージって否定的です。どう考えても瀕死の人間がそんなことするとは思えない。作者もその辺は同じ気分みたいで、ならばきっと新しいダイイング・メッセージを見せてくれるのかと思いきや、それは少し肩透かし。内容的には全面的に評価できないですけど、何より「正しい探偵小説」って匂いがぷんぷんする一編じゃないかと。ただ、やはりこのシリーズは一作目から読まないと面白さも半減なんだろうな。
ラグナロク洞—「あかずの扉」研究会 影郎沼へ (講談社ノベルス)
講談社
¥ 987
2004-05-31(Mon) [長年日記] 編集
_ blosxomの設置
[夏空に気合いの入った強風の休日。blosxomをせっせと設置していたのでした。
blosxom(プロッサム)は、いわゆるウェブログアプリケーションのひとつ。本体は驚くほどシンプル。cgiファイルひとつだけですから、インストールなんてあっという間。条件もcgiさえ使えれば大丈夫。機能もシンンプル。しかし、プラグインを導入することによりMT同等の機能を持たせることが出来る柔軟な拡張性を兼ね備えています。
実はMTの前にblosxomを検討していたのでした。しかし、いかんせんまだまだ日本語の情報量が少ない。基本的なとこは大体判ったつもりなのですが、カスタマイズに不安を感じて導入は断念したのです。
今回blosxomを入れたのは、お手軽日記帳が欲しくなったから。MTって、ひとつのエントリがひとつのファイルとして生成されるので、気分的にどうも短い文章を書くのが抵抗あったりするのです。例えば一行だけなんてのはもったいないなぁ、と。そんなにファイルサイズに違いがでるわけでもないんでしょうけど、貧乏性なんでしょうねぇ。
そんなわけで、思いついたことを気軽に書き込めるようにと導入してみたわけです。基本的な機能だけあれば十分ですし。もっともblosxomも一エントリはひとつのファイルで保存されてるわけですから、同じといえば同じなんですけどね。ま、気分の問題です。
あ、それからしばらくは非公開ってことで。大した内容じゃないですしね。
blosxomに興味がおありでしたら、
こちらが参考になるのではないでしょうか。
それから、
▼チャンネル北国tv
blosxomを使った無料ホスティングサービスを運営されています(少しの間だけ使ってました)
