酔眼漂流記

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2004-11-07(Sun) [長年日記] 編集

_ 鬼に捧げる夜想曲/神津慶次郎

第14回鮎川哲也賞受賞作。孤島で繰り広げられる、過去の因縁に根ざす惨劇。もうそれは見事な横溝正史へのオマージュ。『本陣殺人事件』『獄門島』『悪霊島』と言ったところを想像してもらえれば判りやすいかな。横溝世界を愛するものにはたまらない設定。期待を胸にページをめくる。

茶々を入れようと思えば、突っ込みどころ満載。なんだかよく解らない動機、奇想天外過ぎるトリック(いや、それは可能性はあっても…。凡人には思いつかん)。そしてなんと言っても読んでいて辛いのが文章が拙いと言う欠点。頑張っているのは判るんだけど、それがかえって大仰と言うか白々しいと言うか無駄が多いと言うか。結構斜め読み。戦後と言う雰囲気がまったく感じられない、いささか誤謬があるのも仕方ないとはいえリサーチ不足だよね。

最後の一章はちょっとお遊びがすぎるような気も。それならば“あの人”が実の真相を語る、なんてもうひと転びあっても面白かったかな。でもこの気持ちは判る。自分でもやはりこういった物語を書けばこうしたくなるよなぁ。

しかし、なんと言ってもこれだけのものを書き上げることが出来ると言うのは、それだけで充分評価されるべき才能でしょう。それも著者の言葉によれば僅か<q>3年ほど前、本格ミステリと言うものの面白さに触れ、それをきっかけに自分でも書いてみようと</q>思ったわけだから。どんなに優れたプロットやトリックを思いついても形にすることが出来なければ何もならない。テクニックなんてモノは磨いていくもの。これからを思えばこの受賞ってのはおかしくはない。新人さんは巧い下手を問うより、その潜在的なパワーを評価するべきなんだろうな、と思う今日この頃なのだ。余談だけれども歌野晶午のデビュー作『動く家の殺人』を読んだときには今の姿を全然想像できませんでしたよ。だからね。

けれど、同時に受賞した『密室の鎮魂歌』のことを思うと疑問が湧く。このふたつには明らかに差があると思うよ。受賞は『密室』だけで十分だと思うけれど、それでも『鬼に捧げる夜想曲』も受賞とさせた背景を勝手に邪推すれば、その遠因は今年の芥川賞にあるのではないかと。“史上最年少”と言うキーワード。営業サイドから見れば話題にはなるもんね。江戸川乱歩賞もそうだったしなぁ。善くも悪くも影響しているよね。

鬼に捧げる夜想曲 鬼に捧げる夜想曲
神津 慶次朗
東京創元社
¥ 1,995

Tags: Mystery

2004-11-12(Fri) [長年日記] 編集

_ 生首に聞いてみろ/法月綸太郎

待望の法月綸太郎の長編作。10年振りとは。私自身もっとも期待している作家のひとりなので、もう素直にうれしいよ。そして、その期待を裏切ることがない出来。「推理小説」がお好きな方にはきっと満足できると思うよ。

前半は著名な彫刻家が亡くなり(これは事件性まったく無しの病死)、遺作の彫刻の首が何者かによって切り取られ持ち去られるという“謎”のみ。これだけで半分が過ぎていく。はっきり言って長編ミステリの事件としては物凄く地味。

けれど、これが読んでいてちっとも飽きさせない。この“事件”を軸に物語が動き、少しずつ見えてくる背景。真実と思える泡は浮かんでは弾けてゆく。深まっていく謎。判ってくればくる程解らなくなると言う展開。

そして、絶妙のタイミングで起る殺人事件。それも思いがけない人が被害者で、これには正直ビックリ。えー、普通は殺さないでしょ、この手の人は…。

「誰が?」より「何故?」がポイントかな。犯人は“意外”な人ではないしね。その「何故?」に賭ける著者の意気込みはひしひしと感じるよ。少しも奇をてらったところがなく、さりげなく丹念に織り込まれた伏線。その緻密さは上等な鯛焼きっていったところかな。頭の先から尻尾までぎっしりつまっている。全てが有機的に繋がっていて、そこから描き出される真相にはもうぐうの音もでないよ。

以下はもしかするとネタバレに近いかもしれないので、ご注意を。この作品で個人的に一番鳥肌ものなのは、物語の鍵となる点に関して。実は最初から著者はこれでもか、ってぐらいにヒント、と言うよりは解答を繰り返し提示しているんだよなぁ。それだけに、慧眼な読者には「ピンときたよ」と言われちゃうかもしれないけど、凡人の私にはもう「やられた!」とひれ伏すしかないのだ。

殺人事件もひとつ。派手なトリックもないし全編とても地味な展開。大仕掛けのイリュージョンは勿論面白いよね。でも、目の前で起きる鮮やかな不思議であるテーブルマジックだって負けずに面白いのだ。別の感動があるもんね。まさに法月綸太郎のミステリはテーブルマジックだと思うのだ。

生首に聞いてみろ(法月綸太郎/角川文庫)»amazon


2004-11-15(Mon) [長年日記] 編集

_ 水の迷宮/石持浅海

こどもの頃の夢のひとつは水族館で働くことだった。もっと言えばイルカの調教師に憧れていた。今でも水族館と言うところは心躍る場所だ。生命は海から進化してきたからなのか、心安らぐ場所でもあるのだ。仄暗い中、透明なブルーに輝く水槽を見ていると時間を経つのを忘れる程に気持ちが落ち着く。

だから、この表紙と胸を打つ感動と美しい謎。の文字を見れば、それだけでもう激しく心揺さぶられるわけです。『アイルランドの薔薇』が好印象だったしね。そして、十二分にこの「水族館」に酔いました。

水族館で起る展示生物を狙った脅迫者の攻撃。翻弄される職員。そして殺人。その裏に隠された様々な人の「想い」。それは「夢」の重さ。

謳い文句の「胸を打つ感動」は少しオーバーに感じるけど、「それ」が実現すれば感動はきっと間違いないだろうなぁ。素人考えだと不可能ではないように思えるけれど、どうなんだろう。出来ることなら見てみたい。

ミステリとしてお気に入りの部分は、証拠隠滅の方法。似たような方法は他でもあったと思うけれど、これはなかなかその行動が大胆で、少しも不自然ではなく巧いよね。

事件のけりの付け方には異議も感じたりはする。でも、人を裁くことだけが決着の付け方ではないとは思う。こういう償い方もあるだろうとは言え、やはり多少の違和感みたいなものは感じる。納得するには、如何に共感できるかにかかってくるんだと思うんだけれど、感情移入の量がちょっと足りない。3年前に亡くなった片山に対する登場人物とこっちの気持ちの差だな。

「何もなかった」事にしてしまうのは仕方のない部分もあるにせよ、けじめをつける事は必要だと思うよ。事が成就した暁には、ちゃんと出るところへ出るべきなんじゃないかな、と思うのは余計なお世話か。

水の迷宮 (カッパノベルス) 水の迷宮 (カッパノベルス)
石持 浅海
光文社
¥ 890


2004-11-16(Tue) [長年日記] 編集

_ 伝わるWeb文章デザイン100の鉄則

文章を表現する事は嫌いな事ではない。だから、毎度毎度こうして駄文を晒しているわけです。いつも四苦八苦しているけどね。文字で表現すると言うのはやはり難しい。質の高いものを、なんて高望みはしていないんだけど、最低限見苦しくないものにはしたいよ。気をつけているのは、まず判りやすいこと。そして面白いこと。読んでくれた皆さんが楽しんで頂ければ、なによりなのです。

日頃文章上達に切磋琢磨しているなんてことはないんだけれども、文章指南の本は目につくと拾い読みはしている。読んで巧くなるわけでもないとは思うんだけどね。最後のものを言うのは持っている資質なのではないかと。

「伝わるWeb文章デザイン100の鉄則」もそんな一冊。Web上での文章について書かれたものってそれほど類書がない、かな。

もっとも文章上達の為ってよりも、タイトルに「デザイン」とあるように、Webでの文章の綴り方のルールとかマナーみたいなところが主題かな。目新しい事はそれほど多くはないんだけれど、知っているつもりの事を改めて確認するにはいいかも。

伝わるWeb文章デザイン100の鉄則 伝わるWeb文章デザイン100の鉄則
益子 貴寛
秀和システム
¥ 1,890

Tags: Book

2004-11-21(Sun) [長年日記] 編集

_ スヌーカーが面白い

スヌーカーをご存知でしょうか。スヌーカーとは判りやすく言えばビリヤード。ナインボールと同じように手玉を使って的玉をポケットに落としていくゲームと思ってくれれば感じがつかめるかな。日本ではマイナーな存在だけど、イギリスでは(そして旧領国)盛んなゲームなんだ。このスヌーカー、J SPROTSで見ることが出来る。去年その存在を知ったんだけど、これが実に面白いのだ。

ナインボールと違って的玉は全部で21個もある。そして、それぞれにカラーと得点があるんだ。レッド(1点)が一番多くて15個。残りは1個ずつでイエロー(2点)、グリーン(3点)、ブラウン(4点)、ブルー(5点)、ピンク(6点)、ブラック(7点)。台もナインボールに比べると一回り大きいんだ。そしてポケットの穴は小さい。的玉を入れるのはかなり難しいらしいよ。

勝負はポットしたボールの得点で争うわけなんだけれど、これには決められたルールがある。まず最初に狙わなければならないのはレッド。その後他のカラーボールをポットできるんだ。そしたらまたレッドを狙う。以降この繰り返し。ちなみにレッド以外の落ちたカラーボールはまた台の上の定位置に戻されるよ。こうしてポット出来なくなった時点で選手交代。

詳しいことはこちら、First Snooker Experienceを。

スヌーカーのどこが面白いかと言えば、とてもロジカルなところ。将棋やチェスの感覚に近いと思うのだ。相手との駆け引きがかなり重要な点。序盤はセーフティーの応酬による攻防戦になるから、見ているだけでも結構手に汗握る。そして、的玉をポットしていくのはパズルを解くのを見ているようで、それも面白い。なによりグリーンの台の上色とりどりのボールが踊る様は見ているだけで美しい。

伝えきれないスヌーカーの面白さはこちらスヌーカーのよろこびを見て頂ければ判るかと。

なにより百聞は一見にしかず。ビリヤードが好きな人には結構オススメのゲーム。チャンスがあれば見てくださいな


2004-11-24(Wed) [長年日記] 編集

_ 愛と欲望の日々/サザンオールスターズ

サザン通算50枚目となるシングル。妖しさ、いかがわしさ満載で、こりゃかなりいい感じです。スッキリ爽やか系のサザンよりも、こういった方がお好みであるよ。ビデオクリップも笑えて、カッコいいし。

***SA50th SINGLE!!***

そして、話はいきなりiTunes Music Store日本版へ。来年3月にサービス開始なんてニュースが先日出ていたけれど、使えるようになればヒョイヒョイと買ってしまいそうだなぁ。音楽なんて、「あ、これいいなぁ」と思った時が買い時だったりするわけで。欲しいけれど買いにいく程のことはない、と言う微妙なポジションにいるこちらとしましては、はまりそうな予感はする。価格にもよるけどね。

愛と欲望の日々 / LONELY WOMAN 愛と欲望の日々 / LONELY WOMAN
桑田佳祐/岩本えり子/サザンオールスターズ
ビクターエンタテインメント
¥ 445


2004-11-26(Fri) [長年日記] 編集

_ 小魚びゅんびゅん荒波編—にっぽん・海風魚旅3/椎名誠

日本の海べりを脈絡なくほっつき歩くという「海を見にいく」のバカ旅シリーズ第3弾。

椎名誠は大好きでずっと読んでいるけれど、どちらかと言えばこういったエッセイ系の方が好きなのだ。思えば、野外天幕生活とビールを偏愛する志向ってのは椎名誠に感化された故とも言える。大袈裟に言えば、自分を形づけている一冊でもあるのだ。

読めば旅への憧憬をかき立てられる。日々鬱々と「取りあえず」生きているような暮らしを続けていてはイカンイカン。男だったらキッパリと北を目指して旅立たなければ!

いや、別に北じゃなくてもいいんですけど。でも、なかなかそうもいかない訳でありまして。そんな時はこの一冊を酒の友に、彼方の海辺へ想いを巡らすのだ。そこにあるのはうまい酒と肴。ああ、毎回旨そうなものを食ってるんだよね、この人は。うらやまし。

毎度毎度、刺々しくなった心を癒してくれる、そんな一冊。

Tags: 椎名誠

2004-11-29(Mon) [長年日記] 編集

_ アメリカン・ヒーロー

もう20年も前のお話。日本テレビで日曜の午後10時半から放映していたドラマ。ウィリアム・カットが演じる高校教師ラルフがある日UFOから地球を救えと赤いスーパースーツを与えられて、FBIのマックスウェル(ロバート・カルプ)に協力していろいろな事件を解決していくというのが骨子。

ただし、これがこのドラマのキモだけれども、ラルフはスーツの取扱説明書をなくしてしまって、その超能力の使い方がよく判らないのだ。空を飛ぶのも少しもかっこ良くなく、迷走飛行。そして、着陸はいつも墜落。また、ある日突然透明になってしまって慌ててみたり。そんなずっこけ「スーパーマン」の活躍を描くドラマ。

でも、「お笑い」だけの作品じゃなくて、どこかしんみりとさせるところもあったんだよなぁ。ラルフのスーツの使い方が不完全でも、その一生懸命さが胸を打つ、とでも言ったらいいのかな。ウィリアム・カットとロバート・カルプの、つまり日本語吹き替えの富山敬、小林修両名の掛け合いも抜群だったし。

大好きな海外ドラマなんだけれど、なかなか再放送に恵まれてないようで、また見ることが出来ない。極め付きの名作だと思うよ、これは。みたことのない人にも是非お薦めしたい。DVDが発売されたようだけれど、全部そろえるのは結構勇気のいるお値段だしなぁ。スーパーチャンネルとかで放映しないのか知らん?

ぼく、高校教師のラルフ・ヒンクリーです。 ある日、UFOと接近遭遇。地球を救えと赤いスーパースーツを与えられました。 ところが、取扱説明書をなくしてしまったばっかりに、もう大変。空を飛んでも衝突したり墜落したり。 しかし、FBIのマックスウェルとコンビを組んで、ばっちり任務は遂行します。 スーパースーツを着込んだUFO時代のときめき飛行、アメリカン・ヒーロー! はたして、どういうことになりますか…?

オープニングより

アメリカン・ヒーロー DVD-BOX 1 アメリカン・ヒーロー DVD-BOX 1

タキコーポレーション
¥ 7,780

Tags: TV

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