2005-12-30(Fri) [長年日記] 編集
_ 魔神の遊戯/島田荘司
スコットランド、ネス湖の畔の小村で起る奇怪な殺人事件。魔人の叫び声が村を覆い、被害者は五体を引きちぎられてバラまかれる。驚天動地の謎。相変わらずド派手な展開。
読んでいる最中ずっと違和感がありました。もしかしたらコレはアレなのでは、と深読みしていたらその通りで逆にビックリ。島田荘司がこういうことをするってのが、意外なのでした。
初めて読むならいざ知れず、ある程度読んでいる人はアレにづくのでは? 少々不自然、ですよね。根が正直じゃないもんで穿った見方をしているせいなのかなぁ、もしかして。
物語自体は面白く読めました。気分は子供の頃、「少年探偵団」を読んだ時の心のときめき。荒唐無稽、突拍子もない事件にワクワクさせれるのです。被害者は頭や手足を引きちぎられ—切断じゃなくて—バラ撒かれるといった始末。それはあたかも巨人の仕業のごとく。勿論巨人なんている分けないと思いつつも、しっかりその気にさせてくれるところはうまいなぁ。
しかしながら。いったい犯人は何故こんなことを、ってのは最後に当然明かされて、それはそれで納得できる理由ではあります。不可解な出来事にちゃんと解答を与えてくれます。けれど、後出しジャンケンっぽくっていまいちスッキリしない。そもそも犯人の動機がよく判らないのですね。あの人は初登場ってわけじゃないのでしょうか?
スッキリしない一番大きな理由はアレのせいでしょうか、やっぱり。この本のメインディッシュはアレで、そこのところでビックリする作品ってことなのかな。その点に疑心暗鬼だった私にはビックリがちょっと足りないのでした。まぁこれ、もとは文藝春秋の「ミステリーマスターズ」の一冊として出されたもの。御手洗潔の番外編と思えばいいのでしょうか。
魔神の遊戯 (本格ミステリ・マスターズ)
文藝春秋
¥ 1,950
2005-12-31(Sat) [長年日記] 編集
_ 輸送船団を死守せよ/ダグラス・リーマン
読み終えるのにとても時間が掛かってしまった一冊。独逸軍から輸送船団を護る護衛艦の死闘ってことを期待すると、空振り。血湧き肉踊る冒険談じゃないのだ。そもそも物語の中で、護衛任務に就いている時間は極僅か。これ邦題に問題あると思うなぁ。ちなみに原題は"For Valour"。「勇気のために」ってところ?
何が物語の中心かといえば、英海軍駆逐艦ハッカ号の乗組員たちそれぞれの葛藤、といったところでしょうか。戦争中だって皆さんいろいろと悩みはあるのです。悩みを抱えながらも明日をも知れぬ戦闘へ乗り出してゆく。中でも艦長のマーティノーと海軍婦人部隊員アナのロマンスが主軸。個人的にはこれって一番苦手なパターン。戦闘よりも人物描写。ワタクシ的にはハズレなのでした。
ところで。この手のお話は好きでそこそこ読んでいるんだけれど、英海軍が主人公だとドンヨリとした重い気分が漂うのは気のせい? 例えば『女王陛下のユリシーズ号』なんかも、読み終えた後の疲労感。これが米海軍だと状況が苛烈・悲惨でも何処か颯爽としているのは、要するにヤンキー気質ってことでしょうか。
輸送船団を死守せよ (ハヤカワ文庫NV)
早川書房
¥ 945
