酔眼漂流記


2011-05-31[火] 福田和代 [長年日記]

[読書][福田和代]タワーリング

地上50階建のウインドシア六本木が何者かにビルジャックされた。人質は最上階に住むビル会社の社長。ビルの住人、オフィスに勤める大勢の人々も脱出することが出来ず、警察もうかつに突入することが出来ない。

こういう状況から真っ先に想像するのは「ダイ・ハード」だけど、そういう派手なドンパチのお話ではない。犯人と警察の息詰まる攻防というのがメインでもない。緊迫した状況とは裏腹に、合間に挟まれる犯人側の視点で描かれるパートが、ビルジャックなんていう重大事件にかかわらず、庶民的でやけに人間くさい。

犯人と被害者、事件に関わるそれぞれの人の情の話か。人情話といった趣でもある。ウインドシア六本木が、というかこれは要するに六本木ヒルズだけど、が象徴的だ。現代社会の繁栄の象徴だが、本当にそれは「正義」なのか。それは強者の正義じゃないか。しかし、弱者にだって正義はある。それぞれの思いがこの事件のそして物語の根底にあるのだ。


タワーリング(福田和代/新潮社)