2004-11-07[日] 編集
▶︎ [読書]鬼に捧げる夜想曲/神津慶次郎
第14回鮎川哲也賞受賞作。孤島で繰り広げられる、過去の因縁に根ざす惨劇。もうそれは見事な横溝正史へのオマージュ。『本陣殺人事件』『獄門島』『悪霊島』と言ったところを想像してもらえれば判りやすいかな。横溝世界を愛するものにはたまらない設定。期待を胸にページをめくる。
茶々を入れようと思えば、突っ込みどころ満載。なんだかよく解らない動機、奇想天外過ぎるトリック(いや、それは可能性はあっても…。凡人には思いつかん)。そしてなんと言っても読んでいて辛いのが文章が拙いと言う欠点。頑張っているのは判るんだけど、それがかえって大仰と言うか白々しいと言うか無駄が多いと言うか。結構斜め読み。戦後と言う雰囲気がまったく感じられない、いささか誤謬があるのも仕方ないとはいえリサーチ不足だよね。
最後の一章はちょっとお遊びがすぎるような気も。それならば“あの人”が実の真相を語る、なんてもうひと転びあっても面白かったかな。でもこの気持ちは判る。自分でもやはりこういった物語を書けばこうしたくなるよなぁ。
しかし、なんと言ってもこれだけのものを書き上げることが出来ると言うのは、それだけで充分評価されるべき才能でしょう。それも著者の言葉によれば僅か<q>3年ほど前、本格ミステリと言うものの面白さに触れ、それをきっかけに自分でも書いてみようと</q>思ったわけだから。どんなに優れたプロットやトリックを思いついても形にすることが出来なければ何もならない。テクニックなんてモノは磨いていくもの。これからを思えばこの受賞ってのはおかしくはない。新人さんは巧い下手を問うより、その潜在的なパワーを評価するべきなんだろうな、と思う今日この頃なのだ。余談だけれども歌野晶午のデビュー作『動く家の殺人』を読んだときには今の姿を全然想像できませんでしたよ。だからね。
けれど、同時に受賞した『密室の鎮魂歌』のことを思うと疑問が湧く。このふたつには明らかに差があると思うよ。受賞は『密室』だけで十分だと思うけれど、それでも『鬼に捧げる夜想曲』も受賞とさせた背景を勝手に邪推すれば、その遠因は今年の芥川賞にあるのではないかと。“史上最年少”と言うキーワード。営業サイドから見れば話題にはなるもんね。江戸川乱歩賞もそうだったしなぁ。善くも悪くも影響しているよね。
2006-11-07[火] 編集
▶︎ [読書][島田荘司]摩天楼の怪人/島田荘司
あらすじ
ニューヨーク、マンハッタン。セントラルパーク・タワーの34階。死期を悟った往年の大女優ジョディ・サリナスは50年前に犯した罪を告げる。マンハッタンを台風が襲い停電した夜、1階で悪辣な興行家であるジーグフリードを射殺したと言う。彼女のアリバイのない時間は僅か15分。停電でエレベーターは使えない状況では、短時間で自宅と現場を往復するのは不可能だった。ジョディはこの謎が解けるかとミタライに問う。
感想
メインの謎の他にも不可解な事件のてんこもり。セントラルパーク・タワー自体が壮大な謎を秘めた、主役ともいえる。分量も内容もボリューム満点の一冊。しっかり腰を据えないと消化不良を起こしそう。そのかわり歯ごたえも満腹感も充分。相変わらず力技で納得させられちゃった感があるけど、それが嫌みに感じないのはこの人ならではか。
だって、34階から1階の往復をどうやったかなんて、ずっこけましたぜ。これがトリックになるかならないかの際どさ。そう書くといかにもつまらないトリックみたいだけど、そんなことはない。事実驚きましたもん。やっぱりね、謎の演出が見事だから騙されちゃうし吃驚しちゃうし納得しちゃうんだな。結局なんだかんだ言っても好きってことなんだ、島田荘司が。
まぁ、それでも純粋にミステリというよりは冒険物語といった方がいいかも。壮大なホラ話を楽しむって姿勢。
途中にCGで作成されたセントラルパーク・タワーの挿絵がある。これが曲者だ。最後にビックリしたければ、間違ってもパラパラめくっちゃいけない。最初から読むべし。最後の方で色が変わってるページがあるんで、なんだろうと思ってめくってみようとしたんだよね。しなくてよかった。
余談。これと『帝都衛星軌道』を読むと著者のの興味のありどころが朧げながらに判ってくる、ような気がする。ちっぽけでも人類には歴史があるってことも思い至る。過去の上に現在が成り立っていると言うこと。
2008-11-07[金] 編集
▶︎ 訃報
筑紫哲也死去。肺ガン。
▶︎ はてなブックマーク2公開テスト
今月25日にリニューアルされるはてなブックマーク。それに先立ち新バージョンの公開ベータテストが開始された。早速使ってみる。実は今はdeliciouを使っているのだが、またはてブに戻るだけの魅力があるか。
目玉でもある検索機能の強化。これはなかなかよろしいんではないだろうか。はてブに登録されているもののすべての全文検索ができる。自分の登録したブックマークはインクリメンタルサーチによってなかなか使い勝手がいい。
これまでは、自分のブックマークした記事から欲しい記事を探し出すのに、正確にタイトルやタグを覚えておく必要がありましたが、本検索では部分的にヒントとなるような言葉(の一部)さえ覚えておけば瞬時にそのワードで結果を取り出すことができます。
[はてなブックマーク新バージョンの公開ベータテスト開始について - はてなブックマーク日記 - 機能変更、お知らせなど]から引用
うん、これだけでも十分使う意味はあると見た。
2009-11-07[土] 編集
▶︎ 野良猫
最近夜になると、猫の鳴き声が聞こえる。この寒空に寂しげに鳴く猫の声を聞くのは気持ちのいいもんではない。今日、仕事の帰りにその声の主と思われる猫に会った。
そいつはとても人懐こい。オレの姿を見ると一声鳴いて小走りに近寄ってくる。そのままミャアミャア鳴きながらオレの足にまとわりつき、どこまでも付いてくるのだ。これには参った。一瞬このまま家まで連れて帰っちまおうかとも考えたが、うちに飼い猫がいる以上気安く野良猫を連れて帰るのもどうかと。
あまりにも足にまとわりつくので、歩いているうちについ間違えて軽くけっ飛ばしてしまった。軽くと言えどもそいつはビックリしたようで、少し逃げてしまったのだ。たまたまそこに二人連れが通りかかり、その猫に気付いて構い始めた。それをきっかけに帰ることが出来て、ある意味助かった。彼らが来なかったら、そいつから離れることが出来たかどうだか。
今でも、時たまそいつの声が聞こえる。ウーム。どうしようもないよなぁ。
2010-11-07[日] 編集
▶︎ [Comic]ベルセルク35巻
一年ぶりの新刊。今回も前回までの内容をすっかり忘れていてる。さて、今どういう話になってんだっけ?
まぁ、今回はちょっと「軽め」の内容で。敵側がどうも締まりがなく、どうにもピエロと化していて、それはそれで笑えていいんだけど。敵が「弱い」ので、ガッツの強さがこれまた驚嘆するというよりも、敵の弱さをさらに笑える状況にしてしまうという。そういう路線も嫌いじゃないので面白く読んだけどね。
しかし、一年待って読んだ内容がこれってのは、どうかなぁ。どうでもいい話、というのは失礼だと思いつつ、そんなことも思った今回。テンポよく出ているうちの一冊、というのならまた話は違うんだろうけど。『ベルセルク』は本当に面白いんだけど、展開の遅さはちょっと致命的になりつつあるんじゃないか。
2012-11-07[水] 編集
▶︎ [必殺]仕事人の最期はどうだったのか?
久しぶりに「必殺仕事人」の第2話を見た。見終えて肩が凝るほど硬派なストーリーである。主水と左門のツーショットは実に渋い。決していいお兄さん風じゃない秀もかっこいいし。このままで最終回までいってほしかったよなぁ。
必殺シリーズの最後を意識して作られたという「仕事人」。それが必殺=仕事人となるなんてねぇ。
思うのは最初は、どういう結末を考えていたんだろうと言うこと。これで終わりにすると考えていたなら、それに見合う最終回だったはず。できれば、当初の思惑通りに物語は進んでいってほしかった。
実際の最終回。左門は妻と娘を失うことになる。まぁ、娘は死んじゃないけど。二人を守りたいがために、裏家業に足を染めた左門にはふさわしい最期だろう。これは最初から想定していたこと何じゃないか。
第2話の最後で俺も仲間に入れてくれと、願い出る秀に主水は言う。「かわいそうな野郎だ。 おめえもいい死に方できねえや」。秀の最期はこの言葉通りだったんだろうなぁ。
中村主水の最期はどんなのがふさわしいか。彼の業は生き残ってしまうことではないか。「仕事人」1話での彼の台詞。「俺はその仲間の死に様をこの目で見て来たんだ。やだやだ。俺は金輪際こんな生き方したくないんだ」。生き残り仲間たちの非業の死を見届けなければならないのが彼の業。
で、鹿蔵にかつておこうから言われたように、この稼業を続けるように託される。秀は死に、左門は去り、鹿蔵もいない。主水独り。それでもこの稼業からは抜けられない…。