酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-01-07[水] 伊坂幸太郎 [長年日記]

▶︎ [読書][伊坂幸太郎]重力ピエロ

全編に流れるのは優しさ。そこが甘ったるいと感じられることもあるかもしれないが、なんとも心地いい。そして素直にカッコイイと思えるのだ。

なんと言っても読み終えて気分がいい。なんだか幸せな気分。なにも物語は全てハッピーエンドで終わるべし、なんて事は言わない。でも、どうせなら読み終えた後に幸せな気持ちになりたい、と思うじゃないですか。まぁ実際これはハッピーエンドとは言い難いかもしれないけれど。話が出来過ぎ?いえいえ、現実にはありないような事でも、だからこそ小説の中ではスカッとしたいのだ。そこら辺の気持ちにググッと応えてくれる読後感。

もっとも正直いえば、読み始めはハズレかと思った。極めて映像的コミック的なのだ。それを軽快と見るか軽薄と見るか。これが同時代性、今ドキなのかね。最初はついていけなそうに思ったのはワタシが古い世代だからか。しかし、読み進むにつれこれが伊坂節と納得、すんなりと物語の中に入ってゆける。

ミステリの体裁をとってはいるものの、微妙にミステリではない、かな。この人もミステリは目的じゃなく手段として用いているようだ。しかし、ワタシにはまさにミステリ。それは伏線の妙味。トリックといった仕掛け的なものは無いし驚愕の結末といった事も一切無いが、これは伏線の妙を味わうミステリなのだ。隠し味がピリリと効いた一品。

重力ピエロ
伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,575