酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-06-19[土] [長年日記]

▶︎ [読書]名探偵 木更津悠也/麻耶雄嵩

デビュー作『翼ある闇』以来の麻耶雄嵩。そんなわけで10年振りに読むわけだ。月日の流れるのは早いね。そもそも『翼ある闇』は私にはどうも付いてゆけないところがあったわけでして。もうほとんど内容は覚えていないけれど、読み終えて「なんじゃこりゃ!」との思いだけは未だにはっきり覚えていたりするのだ。インパクトだけは充分だったんだけど。負の作用だったけれどね。それ以来麻耶雄嵩には近づかないようにしていたのだな。

しかし、それ以後も麻耶雄嵩の評判は高さはあちこちで目にするんだよね。でも、初体験が初体験だったもんでねぇ。三つ子の魂百までも。いや、関係ないですけど。

が、ミステリ読みとしちゃ好き嫌いがあっちゃイカンイカン、とうわけで今回勇気を出して本作を手に取りましたよ。薄いしね。そうしたら、意外なことにそれほどの毒気もなく普通のミステリ。普通というのは語弊があるけどね。おそらく麻耶雄嵩としてはってこと。本作はどれをとってもハイブロウな4編。ああ、めくるめく謎解きの快感。

そうは言ってもある趣向が凝らされているんだけどね。それは、名探偵の名探偵たる所以。要は望むものがいなければ、名探偵は存在できないってことなんでしょうかね。裏を返せば、名探偵の助手の、助手たる所以でもあるわけかな。そして、最大の助手は我々読み手なのでは、なんてことを勘ぐったりしてね。

この中でひとつ選ぶとすれば『禁区』はピカイチ。犯人と被害者の心理の綾を巧みに解きほぐし解決に至るそのロジックには唸るばかり。確かにあの場面で自分が被害者の立場にいたら不自然なものを感じるだろうなぁ。何気ない場面から殺意の痕跡を掬い取る名探偵の慧眼。でも、何を目撃したのかってのは視線を追えば気づきそうなものだけど、じゃない?

ところで、『交換殺人』の最後で香月は何を期待してなんだろう。うーむ。

本作は単独でも充分すぎるほど楽しめるけれど、やはり麻耶ワールドを知っている方がより楽しめるであろうことは確かかな。これを機会に読まず嫌いは解消しようかな。

名探偵 木更津悠也 (カッパ・ノベルス)
麻耶 雄嵩
光文社
¥ 860