酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-09-19[日] 麻耶雄嵩 [長年日記]

▶︎ [読書]蛍

現在ミステリで使われるトリックは、もちろん全てがそうだと言うわけではないにしろ、過去発表されてきたトリックのバリエーションと言ってもいいのでしょうか。長年読んでいるといやななもんで、トリックに堪能しつつも「ああ、これはあれね」とかどこか醒めちゃったりすることもあるます。

本作のトリックも、元を質せば実にメジャーなトリックのバリエーションでしょう。が、その捻りが実に絶妙にして巧妙。こんな風に使うなんて見事だなぁ。これには、ものの見事に騙されました。結構読んでいる人程騙されるのかも。「こうくるんだろ」と勝手に身構えていたのを最後の最後で見事にひっくり返されました。

真相が判ったとき作者に仕掛けた罠の深さに一瞬何のことか判らなかったのはお恥ずかしい限り。じっくりと理解するにつれ、ジワシワのその出来のよさが判ってくる、スルメ状態。

読んでいる最中は、あまりにもお行儀のいいミステリなんで少しだけ退屈したのも事実。過去に惨劇のあった曰く付きの館。嵐によって閉じ込められる登場人物。そこで新たに始る惨劇。繰り返されてきたミステリのカタチ。もっとも著者は確信犯的にそういう作りにしているんでしょう。それはラストに訪れるカタルシスへのお膳立て、伏線。

最後にひとつだけ疑問。

登場人物たちは驚いていますけど、こっちが何か勘違いしている?


麻耶 雄嵩
幻冬舎
¥ 1,680