酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-10-12[火] [長年日記]

▶︎ [Movie][横溝正史]映画「悪魔の手毬唄」(ネタバレあり)

もう何も文句の言いようが無い。誰がなんと言おうとも大傑作なのだ。このシリーズでは『犬神家の一族』と甲乙付け難いけが、やはり『悪魔の手毬唄』が最高傑作である。剛の『犬神』柔の『手毬唄』といったところか。

晩秋の(原作は夏だけれど)押さえた色調の映像は、どこか哀愁を帯びていて、凄惨な殺人事件が起きるんだけど美しい。その殺人にしてもおぞましくも、どこか様式美といえるものがある。これ以降の作品だと首が飛んだり手首が飛んだりと結構スプラッターだけど、そんなことの無い淡々とした描写が余計怖い。

この映画のポイントはなんと言っても磯川役の若山富三郎に尽きる。しっとりと落ち着いた雰囲気が画面から滲みだしてくるよう。唯一原作と同じキャラクターの警察関係者として、なんだかホッとするんだよなぁ。加藤武演じるいろいろ別人な(笑)刑事もいいんだけどさ。

金田一と磯川警部が再会するシーンにまずジーンと来る。二人の実に懐かしげな笑顔を見るとなんだか泣けてきちゃう。そして、ラストシーンもいい!原作と同じシーンなんだけど、演出としてはこっちが勝ると思うなぁ。このラストシーンにはこれしか無いでしょ。

そうしてもうひとり、岸恵子。この映画の評でよくみるのが「動機が弱い」という点。確かに冷静になって考えれば、何も人を殺してまでもすることなのか、とは思うよ。ただ、私としては岸恵子を見てるだけで納得してしまったよ。彼女の存在が動機たり得るのだ。彼女の存在感全開。その分何も知らなくても彼女が犯人だと否が応でも気づいちゃいそうだけどね。同じ母親の犯罪でも高峰秀子はなんだかおっかないけど、岸恵子は許しちゃいそうな気がするなぁ。

そして何よりも、原作の味を壊さずにしっかりと映像化している点は見事だと思うよね。原作も大好きな作品なんだけれど、よくぞ2時間半に収めた見事な脚本。でも、先に原作を読んだ上で見た方がいいのかもしれない。とにかく、横溝ワールドが好きな方なら是に見て抱きたい。

まったくの余談だけれども。これ以外のシリーズにも出ていらっしゃる辻萬長さん。今でも当時と少しも変わってないですねぇ。他の方は皆さんお歳をとられているのに。

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