酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-10-25[月] [長年日記]

▶︎ [Movie][横溝正史]映画「本陣殺人事件」(ネタバレあり)

本陣殺人事件 [DVD] 1976年の「犬神家の一族」の一年前に撮られた映画。よって、横溝ブームとはまったく無関係なわけだ。しかも知る人ぞ知るATG。そんなわけだかどうか、「犬神」以降のような派手な娯楽性と言った点とは無縁の作品。淡々とした描写が実に渋い。そして異色作。

まず時代設定が原作の昭和初期から現代へと変更。これは何でも予算の関係らしい。もっとも現代と言っても、特に明らかにはされていないけれど、昭和40年代ぐらいかな。今からみればもう十分に遠い昔なので変な違和感は感じることが無いと思う。逆に私にしてみればノスタルジアを感じさせる時代で、いい雰囲気だったりする。この当時ぐらいだったら、犯行の動機となる設定もあり得ると思えるしね。今の時代だと、犯人の動機はかなり特殊な部類にはいっちゃうかもね。と言うか、確実にアブナイ人だ。でも、今でもあり得るか、逆に。

そして金田一役が誰あろう中尾彬。知らない人にはちょっと想像ができないかもなぁ。しかもサングラスにジーパン姿。どこが金田一?って感じかもしれないけど、これがそんなに悪くもないんだ。確か横溝正史も中尾版金田一は気に入ってたらしくて、三枚目の線が抜けてはいるけれど、わりかし原作に近い感じだと思うなぁ。設定が原作に忠実だったらとちょっとだけ残念。

原作の持つ耽美的な怪しさ、陰鬱さも胸が苦しくなるくらい充分出ていて、金田一映画としてはお薦めできると思うよ。原作も、映画にするにはちょうどいい量だし。

ただし純粋にミステリとしてみるとどうかな。金田一耕助はほとんど推理していないし、何よりも肝心の密室トリックの解明は実にあっさりしたもの。どちらかと言えば、何故犯行は起ってしまったのか?って点に重きを置いているかな。人の持つ因業、情念、恐ろしさ、儚さ。

深夜、闇を引き裂く琴の音色と、それに続いて発動されるトリックの美しい様はザワザワと鳥肌もの。これはやはり映像の勝利。

これはまったくの余談だけれども、犯人役は田村高廣よりも古谷版のTVシリーズでの佐藤慶の方が自分の中では印象が強い。

本陣殺人事件 [DVD]

ジェネオン エンタテインメント
¥ 3,243