酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2004-11-15[月] 石持浅海 [長年日記]

▶︎ [読書][石持浅海]水の迷宮

こどもの頃の夢のひとつは水族館で働くことだった。もっと言えばイルカの調教師に憧れていた。今でも水族館と言うところは心躍る場所だ。生命は海から進化してきたからなのか、心安らぐ場所でもあるのだ。仄暗い中、透明なブルーに輝く水槽を見ていると時間を経つのを忘れる程に気持ちが落ち着く。

だから、この表紙と胸を打つ感動と美しい謎。の文字を見れば、それだけでもう激しく心揺さぶられるわけです。『アイルランドの薔薇』が好印象だったしね。そして、十二分にこの「水族館」に酔いました。

水族館で起る展示生物を狙った脅迫者の攻撃。翻弄される職員。そして殺人。その裏に隠された様々な人の「想い」。それは「夢」の重さ。

謳い文句の「胸を打つ感動」は少しオーバーに感じるけど、「それ」が実現すれば感動はきっと間違いないだろうなぁ。素人考えだと不可能ではないように思えるけれど、どうなんだろう。出来ることなら見てみたい。

ミステリとしてお気に入りの部分は、証拠隠滅の方法。似たような方法は他でもあったと思うけれど、これはなかなかその行動が大胆で、少しも不自然ではなく巧いよね。

事件のけりの付け方には異議も感じたりはする。でも、人を裁くことだけが決着の付け方ではないとは思う。こういう償い方もあるだろうとは言え、やはり多少の違和感みたいなものは感じる。納得するには、如何に共感できるかにかかってくるんだと思うんだけれど、感情移入の量がちょっと足りない。3年前に亡くなった片山に対する登場人物とこっちの気持ちの差だな。

「何もなかった」事にしてしまうのは仕方のない部分もあるにせよ、けじめをつける事は必要だと思うよ。事が成就した暁には、ちゃんと出るところへ出るべきなんじゃないかな、と思うのは余計なお世話か。

水の迷宮 (カッパノベルス)
石持 浅海
光文社
¥ 890