酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2005-08-19[金] [長年日記]

▶︎ [読書]天使のナイフ/薬丸岳

桧山貴志の妻祥子は殺された。僅か13歳の少年たちに。少年法の保護のもとで罰せられる事のない彼等に対する桧山の行き場のない憤り。「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」ーー 4年後。犯人の少年の一人が何者かに殺害される。再び事件と向き合う事になる桧山の前に明かされてゆく真実とは……。

第51回の江戸川乱歩賞受賞作。少年犯罪というテーマに始り、そして収束していくプロットはとても重厚で、既に10年選手の風格といったものを感じさせる。素直に凄いなぁ、と。乱歩賞って個人的には当たり外れが大きいけれど、これは納得の受賞作。

最初から最後まで破綻することもなく、自己満足にも感じられるところもなく、知らず物語の中に否が応でも引きずり込まれる。読み始めたら止まらない。物語の展開も、うねりがあって飽きさせない。

しかし、テーマがテーマだけに読み手の受け取り方も千差万別ではないかと。少年による犯罪はどう対処していけばいいのか。「厳罰」を求めていくのがいいことなのか、「更生」を第一に考えていくのがいいのか。被害者の立場と加害者の立場。この辺りは難しいところだ。

傍観者としては、大人だろうが子供だろうが罪は罪だろう、とは思う。もっとも、そんな事を考えなければならない「現在」を憂うべきなのかもしれない。

ミステリとして最後にちゃんとサプライズをーちょっと後味は悪いけれどーもってきているし、伏線も地味ながらちゃんと押さえられいてとても好印象。それだけに、これでもかというぐらい畳み掛けてくるそのテーマの重さが、純粋にエンターテーメントとして読むときにやや邪魔になるような気もする。ともすれば臭気とも感じられるのだ。そこまでしなくてもとね。だからこそ面白いんだというのも事実でもある。

天使のナイフ
薬丸 岳
講談社
¥ 1,680