酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2006-07-04[火] G.K.チェスタトン [長年日記]

▶︎ [読書]ブラウン神父の不信

ブラウン神父を主人公とした短編集の第3冊目。

天の矢

見晴らしのいい塔の上で、大富豪が何者かが放った矢によって殺される。誰が何処から放った矢なのか皆目見当がつかず、まさに天から飛来した矢の如し。

人の思い込みを利用したトリック。普通に考えれば、判ってしまうような事でも実に見事にミスリード。

しかしながらそのトリックよりも、結末に注目。物事ってのは見る立場が違えば表裏一体。悪と善も見方によればたちどころに変わってしまう。ここでも人の思い込みを利用。

犬のお告げ

評価の高い一編なのだが、流石に面白い。殺人事件の当日の犬の興味深い行動。容疑者の一人に激しく吠えかかる犬。それは犯人を示す犬のお告げなのか?

ブラウン神父の卓越した洞察力が、「犬のお告げ」の本当の意味を明らかにする。

前半で犬の行動を神秘的に見せて、いかにも犬には何か特殊な能力があるのでは思わさせる。後半ではその行動に実に合理的な解釈を示す。そこから犯人を鮮やかに浮かび上がらせる。この対比が素晴らしいなぁ。

ムーン・クレサントの奇跡

被害者は密室状態の部屋から消え、離れた場所の木の枝に吊るされた状況で発見される。不可能犯罪トリック。

しかしながら、これはかなり有名なトリック。きっとミステリ好きの人ならば、それと知らずに見たり聞いたりした事があるのでは。

私も、このトリックだけは知っていたので途中で気がついた。だからつまらない、なんて事はなく、タネも仕掛けも判っていながら引き込まれてしまう話の面白さ。

それに、思っても見なかった犯人像。これこそ隠し球。かなりの癖玉だけれど。

ダーナウェイ家の呪い

ミステリというより、ホラーっぽいお話。

あまりにも唐突に、ある意味反則的に、謎が解決するけれど、著者も流石にそれは判ってたんでしょう。ブラウン神父の最後の台詞がなんだかいい訳と思えて微笑ましい。

ブラウン神父の不信 (創元推理文庫)
G.K.チェスタトン/中村 保男
東京創元社
¥ 693