酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2006-09-29[金] 有栖川有栖 [長年日記]

▶︎ [読書][有栖川有栖]絶叫城殺人事件

火村・有栖コンビの館をモティーフにした六編。と言っても、必ずしも『館』が舞台ってわけじゃないけど。

黒鳥亭殺人事件

「推理小説」としてはかなり穴がある。火村の推理は「想像」でしかない。それでもいいのだ、これは。読み終えた後に白と黒のイメージが鮮烈に浮かぶ。無邪気さの罪。

壷中庵殺人事件

ストレートな密室殺人。なので、面白みに欠けるかも、です。

月宮殿殺人事件

闇に浮かぶ月宮殿がこの物語の主役、いろんな意味で。ミステリとしちゃイマイチなんだけど、著者の描く月宮殿のイメージが、こちらにも幻想的に伝わってくる。月明かりのした、不意にそんな建物に出くわしたら鳥肌が立つだろうなぁ。怖さ半分、美しさ半分。

雪華楼殺人事件

これも一種の密室殺人事件、というよりも足跡のない殺人か。一番印象に残る一編。事件の背景にあるものを想うと、切なくなるのだ、オジサンとしては。若いってことは、強さもあるけど、脆いよなぁ。だからこそ、眩しく光って見えるのかもしれない。

紅雨荘殺人事件

全編「紅」のイメージが溢れる一編。犯人の意図。動機の底に実に現実的な感情がある。派手な動機ってものミステリの面白さだけど、さり気なくハッとするのもいい。出来としては、これが一番かな。アリバイを否定する容疑者ってのが面白い。

絶叫城殺人事件

かなり救いのない結末。他のもそうなんだけど、特にこれは。蛇足ながら『絶叫城』というゲームは『クロックタワー』みたいなもんかいな。

著者曰く、それまでは「殺人事件」とつく題名は避けていたそうで。確かにありきたりになりがちではある。しかし、館という同じパターンでも、亭・庵・殿・楼・荘・城と趣向を凝らしていて、目次に並んだ様はなかなか美しい。

絶叫城殺人事件 (新潮文庫)
有栖川 有栖
新潮社
¥ 620