酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2007-02-01[木] [長年日記]

▶︎ [読書][藤原伊織]蚊トンボ白鬚の冒険/藤原伊織

あらすじ

夏のある日、倉沢達夫の頭の中に侵入してきた生物。それはシラヒゲと名乗る蚊トンボだった。白鬚のおかげで超人的な能力を手に入れた達夫は、アパートの隣人・黒木をやくざ風の男達から救う。それがきっかけで、彼自身もカイバラという謎の男に狙われる羽目に。達夫はひとりの女性のためにカイバラとの対決へ向かう。

感想

こういう例えは失礼と承知しつつも言えば、真っ先に思い浮かぶのが『寄生獣』だ。最もこちらは寄生するのは未知の生物じゃなくて、蚊トンボだ。こいつは言葉を喋るし博識だ。おまけに瞬間的に人間の力を増幅する事が出来る。とまぁ、いきなり現実にはあり得そうにない設定。

敵役は普通の人間でありながら、モンスター的なヤツ。クライマックスはこいつとの対決なんだけど、超人同士の戦いは菊池秀行かって感じ。藤原伊織の代表作といったら『テロリストのパラソル』とか『てのひらの闇』とか。そんな硬質な物語と比べると、ちょっとビックリ。ただ、藤原作品というのはどれもファンタジー、おとぎ話なんだと思う。なさそうでありそうな世界を楽しむのがよろしいのではないかと。

そういった設定以外は、いつもの藤原節。結構な分量だけど、あっという間に読ませてしまう。実際にはたった三日間の物語。でも、とても中身が濃い。

主人公が中年のおっさんじゃないという点以外は、周りを固めるキャラクターはいつもの藤原流。罰当たりな事をいえば、名前が違うだけで……。でも、気にならないのは誰もがとても魅力的だからだ。何度でも会いたいと思わせるから。物語に関係なく、それぞれのカッコ良さに酔っちまうのだ。

達夫とシラヒゲの関係も、状況がアレだけどコンビ物の王道といったもの。最初は反目していても、やがて信頼関係が生まれ絶妙のコンビになっていく。だから、ラストシーンは、どう転んでも泣くだろうなと思った通りだった。「恋と冒険があった」という件にはもうこらえ切れず。このラストに不満はある。でも、こうじゃなかったらこんなに切なくならないだろうなぁ。人は誰しも別れを避けて生きてゆけないのだよ。

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