酔眼漂流記

酒を片手に酔眼化する日々の記録


2009-05-09[土] 島田荘司 [長年日記]

▶︎ [読書][島田荘司]最後の一球

奇跡が起こったよ石岡君

最後の一球 (講談社ノベルス)(島田 荘司)

これ、御手洗潔が出てくるけど番外編といった趣。まったくの脇役で彼がいなくてもいいようなお話。とは言え、やはり彼がいるから面白いのである。

それというのも御手洗がある意味手も足も出なかったケースなのだ。いつものように奇妙な依頼が舞い込んで調査に乗り出すんだけど、流石の御手洗にもどうする事が出来ない。彼もスーパーマンではない。そんなところが妙に面白かったりして。ニヤニヤしながら読んじゃいました

そこで話は一転して。メインの物語は一人の男の野球に掛ける情熱。夢と希望と挫折。そして友情。高校時代から注目を浴びる天才選手武智。一方で才能を努力で補ってきた竹谷。

竹谷の視点で物語は進んでゆく。そして、別々の道を歩みながら同じプロのチームに入団する事になる。まさに光と影といった二人だけれど、お互いに認め合う仲でもあるのだ。やがてある「事件」が起きて二人の人生を大きく変える事になる。

で、登場するのが「最後の一球」なのだ。

「二番手の男」が投じた友情と惜別の一球が御手洗も諦めかけた「事件」を打ち砕く!

ここで二つの物語がシンクロ。おお、まさに奇跡の一球……は言い過ぎだけど。「事件」の裏側をまったく別の物語で解き明かすといったスタイルなのか。なるほどね。

もっともミステリとしてみると島田テイストはそれなりにあるんだけどかなりライト。奇想、不可能犯罪なんてものを期待するとペケ。ミステリとして読んじゃいけないかなぁ。やっぱりこれは青春小説といった類いのものだよね。野球では名もなき二流の選手だった竹谷。でもその生き様に温かいものを感じる。そんな彼だからそこ、最後に放つ小さな奇跡が大きな感動を呼ぶんだよ。

最後の一球 (島田荘司/講談社ノベルス)»Amazon| »セブンアンドワイ icon