10月の旅は新潟県長岡へ。旅の主題は司馬遼太郎の小説『峠』である。『峠』は、幕末の動乱期に越後長岡藩の家老となった河井継之助の物語だ。中学生の時に、初めて読んだ司馬作品である。本を読むことの面白さを知った一冊であり、司馬文学に傾倒していくことになるキッカケでもある。いつかは訪れようと思っていたが、漸くの長岡行きだ。訪れるにあたって、電子書籍版で再度購入した。通しで読むのはいつ以来だろう。
上越新幹線で東京から長岡へ。上越新幹線は初乗車だ。ちなみに行きも帰りもグリーン車にした。事前の割引を使うと普通席とそれほど料金差がない。最も、普通席も事前割引で安くなっているので、相対的には高いのは変わらないのだが。
長岡北越戊辰戦争伝承館と八丁沖
新幹線から上越本線に乗り換えて押切駅へ。最初の目的地は、長岡市北越戊辰戦争伝承館だ。
明治維新後、国内は新政府側と旧体制側とで対立する。そんな中で長岡藩は、と言うより継之助は、わずか7万4千石という小藩ながら武装中立という立場を模索する。しかし、そのきわどい夢は時勢という大波に砕け、長岡藩は新政府軍との勝ち目の薄い戦争へと突入することになる。
伝承館は、この地域の住民から見た戦争のありさまを伝える施設だ。
ここを訪れたのは、別に目的がある。伝承館の目の前には、当時八町沖と呼ばれた沼があった。戦いの序盤で新政府軍の手に落ちた長岡城を、再奪取する作戦を立案する。それは人の通行は無理だろうと思われていたこの沼を渡って奇襲するというものだった。
伝承館のバルコニーから八町沖を望む。今は水田が広がるのどかな光景だ。しかし、確かにここで歴史は紡がれていたのだ。
ちなみに、作戦は成功し長岡城は再び長岡藩の手に。しかしこの戦いの中、継之助は敵の銃弾に倒れる。そして、体勢をたて直して反撃にでた新政府軍に耐えうる余力はもはやなく、北越戦争は新政府軍の勝利で終わる。
うっかり時間を間違えて電車の待ち時間がだいぶできてしまった。時間潰しにしばしとりとめのないスナップを。
摂田屋
押切駅から宮内駅へ。次に訪れたのは摂田屋。旧三国街道に面した町で、古くから酒・味噌・醤油などの醸造が盛んな地域である。個人的な興味は、政府軍との開戦当初長岡藩の本陣がここに置かれたところにある。
青島食堂の生姜醤油ラーメン
町を巡る前にまず昼飯を。
訪れたのは、宮内駅前にある青島食堂。食堂と言ってもあるのはラーメンのみ。
そのラーメンは、生姜醤油ラーメン。長岡市発祥のご当地ラーメンだ。青島食堂がその発祥の店と言われているそうだ。訪れたのは14時過ぎだったが、15人ぐらいがが並んで待っている状態。人気店だというのは認識していたが、ちょっと油断していた。大人しく並んで待っていたけれど、並んだ甲斐はあった美味さ。生姜の風味が実に良いアクセントになっている。
光福寺 長岡藩本陣跡
長岡藩の本陣が置かれていたのが、ここ光福寺。
当時を偲ばせるものは、この碑ぐらいしかない。
それでも。その地を訪れることには意味がある。
旧三国街道
この細い道が旧三国街道である。
両側には日本酒の醸造元の吉乃川の建物が並んでいる。そして、何やら良い香りが漂っている。麹の香りなんだろうか。
吉乃川酒ミュージアム醸蔵
ここは吉乃川の歴史、酒造りに関する展示と売店、そしてここでしか飲めない日本酒もある『SAKEバー』がある。
せっかくだからおすすめの日本酒をいただく。なんでも、季節限定の市販されていないお酒ということだ。名前と聞き忘れてしまったが、流石に旨かった。口当たりが良くていくらでも飲めてしまいそうな、ある意味危険なお酒である。まぁ、個人的な趣味から言うとちょっと甘めかな、というところ。他のお酒もと思ったが、ここでは我慢。
つづく。